黒猫荘
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THE TELL-TALE HUT
オーナー:庵本譚
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107. 2005年01月19日 07時18分34秒
投稿:庵本譚
庵主です。
思い付いたので書いておきます。
「しまったあ、同じタイトルの松本清張を買ってしまったあ!」
「dの複合」
「いつものことなので、つい」
「持続の習慣」
「でも、テレビ化帯が珍しいかも」
「げてものみち」
「いや、毎日に反省はしてるんですよ」
「かるいやつら」
ダラダラ残業。買った古本は
「ロード トゥ パーディション」マックス・A・コリンズ(新潮文庫)100円
「ウインド・トーカーズ」マックス・A・コリンズ(新潮文庫)100円
「ふたりジャネット」テリー・ビッスン(河出書房:帯)850円
百均で何かと話題のコリンズのノベライズと、奇想コレクションの3冊目。
そうかあ、テリー・ビッスンを処分する人がいらっしゃるんだなあ。
買った新刊は、
「最後の一壜」スタンリイ・エリン(ポケミス:帯)
「五色の雲」RVフーリック(ポケミス:帯)
遂に出た!エリンの第三短篇集!!光文社と取りありになるかもしれないと
思ったけれど、結局納まるところに納まりましたですねえ。
しかし、時ならぬ異色作家短篇集ブームがなければ、さらに先延ばしされていた
のではなかろうかと小一時間。
フーリックは年末発売の筈が半月遅れました。
あとがきが、年の瀬を意識したものだったので、少し旬を外してしまったかも。
いや、中国は旧正月だから、逆にこれで正解かな。
それでわざと、1ヶ月遅らせたとすると、粋なはからいですな。
>まさかね?早川書房に限って。
読み終わった本は迫光「シルヴィウス・サークル」(東京創元社)。
「建築屍材」と鮎川賞を争った作品だそうです。
ペンネームが格好いいです。二文字で姓名といえば麗羅ぐらいかな?
1930年代の銀座・浅草や山の手、伊豆半島の保養地を舞台にした技巧作で、
いかにも鮎川賞応募作らしく、三重の不可能犯罪を盛り込んだ贅沢なお話でした。
轟音の中、「さかしまの娘」が回りながら昇天する時、九曜の女の因縁は降臨する。
巨大な円筒の中から消え失せる兇器、衆人環視の岬で滅びる命、
シルヴィウスに当たる光が見せた、至福という名の煉獄。
退廃の中で、人は愛に惑い、恋に殉じる。科学の夢はそこにある。
30年代のデカダンなムードと奇矯なキャラクター群、小技を積み重ねた
不可能トリック、飄々とした「ホームズ」と「ワトソン」など、
意欲作であることは誰しもが認めるところでしょう。
惜しむらくは、ストーリー構成力。仮に作者がこの書の解説を書いている
皆川博子だったら、同じネタで絢爛な一大伽藍を構築したことでしょう。
饒舌を楽しむべき設定であるにも関わらず、作者が淡々と語るために
勿体無いオバケを押えるのに必死になりました。うーん、惜しい。
中身は、面白かったです。「科学ネタ」の「らしさ」とそれ自体に
もう一捻りあれば、さらに完成度は上がったでしょう。
いずれにしても、この不思議感覚は、貴重であります。
そんなところです。
106. 2005年01月18日 12時53分19秒
投稿:庵本譚
庵主です。
ビクトリア・ホルトのJudas Kissの邦題ですが
「偽りの口づけ」でした。
お詫びして訂正します
105. 2005年01月18日 06時12分12秒
投稿:庵本譚
庵主です。
手間がかかるので日記スタイルは、やめました。
米丸さんの「翻訳道楽」001〜006が届きました。
ROMコンベンションでお披露目のあった私家版の短篇翻訳・集です。
10年留保で著作権フリーになっている短篇を発掘して一日数ページ
ずつ翻訳してしまえという企画で、その綺羅星の如きラインナップに
ROMのつわものどもも溜め息を漏らしたものです。
第一回配本(?)はレックス・スタウトの「デーモンの死」に
ベイリーのフォーチュン氏もの5編。
HMMとジャーロにほぼ独占されてきた「翻訳短篇推理」の窓を
こじ開ける試みとして大いに期待しております。
勿論、コスト・パフォーマンスは商業誌の方が上ですし、
希少性という点でも「コピー誌に絶版なし」なのですが、
同人誌だと、つい財布の紐が緩んでしまいます。
「コミケ効果」とでもいうべきでしょうか、自分もねっからの
同人誌野郎なので、応援したくなるのであります。
「翻訳道楽」というネーミングも秀逸。
これを越えるのは「翻訳極道」しかないぞ、って感じ。
米丸さんがオヤジ的アマチュアの楽しみの伝道者ならば、
フーダニット翻訳倶楽部はプロの翻訳家を目差す(あるいは「である」)
女性陣のサロンの趣。
メールマガジン「海外ミステリ通信」の最新号はフーダニット翻訳倶楽部の
選ぶ昨年の翻訳推理ベスト10とその選評座談会。
ベスト3はともかく、4位以下に巷のベスト10とは一味違った作品が
ランクインしているので、趣味の窓を広げるのに適しています。
個人的には、巷のベストで話題にならなかった「貧者の晩餐会」の高評価が嬉しいです。
買った古本は、
「富士山の身代金」藤山健二(新潮社:帯)
「鷲は舞い下りた(完全版)」ジャック・ヒギンズ(早川書房)
「鷲は飛び立った」ジャック・ヒギンズ(早川書房:帯)
「邪悪の貌(上・下)」ウィリアム・ディール(徳間文庫)
「富士山の身代金」は93年の日本サスペンス大賞候補作。
島田荘司の帯の煽りに騙されてみました。
ジャック・ヒギンズの2作は、今年の課題本とその続編。
実は、ジャーロ最新号で特集されているオールタイムベスト100で、
未読本が10冊以上あるものですから、今年の読まず嫌い矯正は
そのあたりを責めてみようかな、と思っています。
(このオールタイムベスト、ベスト10にも未読があったのが、
ショックだったのでありました。)
ディールの上下巻は、サイコ・リーガルサスペンスの怪作「真実の行方」の続編。
なんとなく買いそびれていたので捕獲してみました。
オール百円均一です。
読了本は
「さらば長き眠り」原りょう(早川書房)
「拳銃片手に流れ者」城戸禮(春陽文庫)
前者は、旧・沢崎シリーズの第3長編で、一応の完結編。
どこが「一応」かというと、新シリーズが出たから。
どこか「完結編」かというと、ネタばれになるのでパス。
名探偵の帰還。400日ぶりに渡辺探偵事務所に戻ってきた沢崎を待ち受けていたのは
律義な浮浪者だった。そして、沢崎の「空き家事件」は、依頼人探しで幕を開ける。
仕組まれた八百長疑惑、その渦中で自ら命を絶った娘、
鉄壁と思われた「自殺」の目撃証言は、沢崎の捜査が進むにつれ、危うさを増していく。
捏造された過去、偽りの今、小さな疑惑が、長き眠りの醒ますとき、
ああ栄冠は、消えにけり。
新シリーズも多重プロットが凄いと思いましたが、やはりこの「完結編」のもつ
ケレン味はシリーズ最高の出来映えでしょう。
一見、チャンドラーの地口に見える題名も、読み終わってみれば「これしかない」と
大きく納得すること請け合いです。
いみじくも作中人物が漏らす「小さな石の置かれた場所がおかしいからそれを
動かそうとして、大きな土砂崩れを起してしまった馬鹿な男」という述懐が
事件の全てを表しています。
なるほど、これだけの話を書いてしまうと、次が書きにくくなるわけです。
傑作。
もう1冊の疑似渡り鳥は、小林旭&宍戸錠の世界を更にオバカにした
いつもながらの城戸禮節炸裂、という以外に語るべき内容はございません。
いや、ホントにないんだってば。
げ、げえ。
あ、あんたが、ルガーの竜さんだってのかあ、
ガッガッ、ぐ、ぐええ。
とりあえずそんなところです。
104. 2005年01月16日 13時45分34秒
投稿:庵本譚
庵主です。
愛猫鉄人様
毎度ありがとうございます。
>絶好調
絶版本好事家調査会?
と返すと「ネタバレ」?
原りょうを読んでいると「藍より青し」という
言葉が身に沁みて分かります。
プレイバック、沢崎!
よつや様
お運び頂き、またご高評を頂戴し、ありがとうございます。
楽しんで頂けて幸いです。
どこぞのビョーキの別人さんも
草葉の蔭で見守っていてくださることでしょう(>殺すな、殺すな)
受けたのでもう少し「闇の衣」モードで続けてみますね。
2005年1月15日(土)
◆朝から氷雨模様につき、家事に勤しむ。じゃあ、何も買い物ができないかというと、
そんなことはない。ネットに繋がったパソコンがあれば、なんぼでも買い物は出来てしまうのであった。
家人は先日から映画「プリンセス・ブライド・ストーリー」を観たいらしいのだが、最寄りのTSUTAYAでは扱われていなかった模様。
ならば、少しは役に立つところをみせてやろう、とネットで検索してみる。
「マジック」やら「マラソンマン」を世に問うた才人ウィリアム・ゴールドマンの作品なので、ワタクシ的にも探究心が湧いてきたという事もある。
結果、レンタル落ちVHSなら500円が相場という事が判明。情けない事に送料の方が高くなる由。
ふうむ。
ところで「プリンセス・ブライド・ストーリー」で検索を掛けると、
映画ソフトに、サントラ盤のCD、更に映画パンフレットがヒットした。
映画というのは一粒で何度も美味しい構造になっているんだねえ。
更にこの作品、一昨年DVD化されており、4000円も出せばAmazonで買えてしまうのである。
次世代DVDの時代になったらなったで、またぞろ再リリースされるのかな?
このハリウッドのしたたかさに比べれば、ポケミス名画座と称して、翻訳権料なしで昔の名画の原作を上梓しては口に糊している早川書房なんぞ、可愛いものであると感じてしまうのである。
◆「追いつめる」生島治郎(中央公論社)読了
元日本版EQMM編集長にして小泉喜美子を袖にした男・小泉太郎の出世作。
これと「黄土の奔流」を読まずして日本のハードボイルドや冒険小説は語れない、
というわけで、今更ながらこの第57回直木賞受賞作を手にとってみました。
元版はカッパノベルズだそうで(これは「黄土の奔流」も同じ)「ノベルズ作家」
という昨今の蔑称は、昭和40年代初頭には通用し得なかったわけであります。
わたし、志田司郎は、元兵庫県警の刑事部長。暴力団の企業舎弟を追う最中、
同僚の刑事を誤射し半身不随の身にしてしまう。その責を取って警察を退職、
スキャンダルを嫌う義父の企みで妻子とも離縁した。だが、それは終わりではない。
猟犬の血を滾らせ、巨悪の喉笛に食らいつくまで、わたしの追跡に終わりはないのである。
日本ハードボイルドの原点という持ち上げられ方をする作品ですけれども、実のところは
暴力団情報小説の色合いも濃厚です。「ハードボイルド」と呼ぶには、この作品の主人公
志田は内面を語り過ぎるような気がします。この辺は、作者なりのリアリティー追求の結果なのかもしれませんが、卑しい神戸の裏町を只管標準語で押し通す不自然さの方をなんとかしてくれ、といいたくなってしまいます。おまけに、この男、一匹狼を気取る割りには、随分と組織の力を利用します(組織に利用されている、ともいえますが)。
まあ、よくも悪くも「非情のライセンス」。
別にこの作品を読まなくても日本のハードボイルドは語れるような気がしました。
2005年1月14日(金)
◆神保町タッチ&ゴー。小宮山書店のガレージセールを眺めていたら「だいぶん抄訳文書」の
リーダーズ・ダイジェストの小説集が20冊ばかり並んでいた。念のため見慣れないタイトルに
チェックを入れていたら、(おそらくは)未入手のビクトリア・ホルトを発見。
「裏切りのくちづけ」ビクトリア・ホルト
原題は”The Judas Kiss”。こういうのは国会図書館で検索してもヒットしないんだよなあ。
で、皆様も御存知のように小宮山のガレージセールは「1冊でも500円、2冊でも500円、3冊でも500円」が掟である。
ここは意地でもあと2冊拾う必要があるではないか。
俄かに、ぼんやりモードから探索モードに切り替えて、棚を漁り始める。
2冊目は2分ほどで決定。
d「ザ・クライム」山野浩一(冬樹社:初版・帯)
自分では安くでしか拾ったことのない本だが、まあ、まともにいけば千円強の古書価はつく作品集だ。
それも帯付きだ。実は帯をみたのは初めてである。
よしっ、これでモトはとったぞ(>何のモトだ?)
残る1冊で悶々と悩む。未所持とはいえ生島治郎や夏樹静子や連城三紀彦をわざわざハードカバーで買って場所を取られるのも業腹だよなあ、などと十数分を無駄に過ごした挙句、決断したのはこれ。
「ドールズ 闇から招く声」高橋克彦(角川書店:帯)
ううむ、ドールズって3作目が出ていたんですね。それも長編。知らなかったあ。
(>もう、4年も前だぞお)
というわけで既に文庫落ちしている(らしい)けれども、知らずにスルーしていたこの本で3冊目。
しめて計500円!
こんなところで、勘弁してください。
◆「覚醒するアダム」デヴィッド・アンブローズ(角川文庫)読了
昨年「幻のハリウッド」「迷宮の暗殺者」でその存在を今更にして知った作者の
翻訳第2作。原題は「Superstition」。直訳すれば「迷信」。これは邦題の方が
断然格好いいです。「幽霊」対「科学」を正面から描くとマシスンの「地獄の家」
あたりのお話になるのでしょうが、これは「科学」で生み出した筈の「虚構」の
暴走とそれに翻弄される人々の有り様を描いたモダンホラーの快作です。
エセ心霊術師夫婦の告発で成功を収めた女性記者ジョアンナと、物理学者にして
心理学者にして超自然現象研究者のサムとの出会いは、新たな「実験」への
扉を開く。その実験とは「幽霊」を科学的に創り出すこと。幽霊の名はアダム。
「18世紀のアメリカに生まれ数奇な運命を辿り、フランス革命の中で命を
散らした」という歴史を与えられた架空の存在。
だが、虚構が覚醒した時、実験の成功を祝する歓喜は恐怖に、歓声は悲鳴へと転じていく。扉を叩く夢、墓場での出会い、カリオストロの伝説、そして弔鐘を鳴らす生きる喜び。
どこへ話が転がっていくのか、全く見当のつなかいノンストップ・ホラー。
メタ小説的な色彩は飽くまで「効果」に留め、古典的ともいえる幽霊譚の小道具やシチュエーションで新しい恐怖の地平を拓く事に成功しています。ただ、ジョナサン・キャロルのような通好みのダークさはなく、理詰めのリズムでクライマックスにもっていくのがこの作者の持ち味。そしてハリウッドホラーのお約束である、ラスト・シーンの「ショック!」。見事なオチの付け方で、この物語には捨てるところがない事を証明してみせます。これは第1作の「そして人類は沈黙する」も早く読まねば!
2005年1月13日(木)
◆朝一番でMYSCONの主宰者だった某著名サイトの管理人さんから「お詫びメール」が届く。
「なんだ、なんだ、なんなんだ?」と思って中身を読むと、昨年末の文士バーの会合で、
格安にてお譲りした山中峯太郎の本を、誤って某著名ネット古書店に処分してしまったんだそうな。
丁度その会合で、私が某著名ネット古書店に売り払った山風本をその著名管理人さんが
それと知らずに買った話が出て「けだし、古本は天下のまわりものですのう」と呵呵大笑していたのだが、期せずして今度は逆回りで本が流れた模様。
さあ、幾らの値がつくのか、「東亜旋風秘録」!
刮目して待て、古本青年諸君
◆うだうだ残業につきまっすぐ帰宅。悪魔の機械はミステリーチャンネルの「黒と青」と
「第一容疑者(前編)」を録画している。それにしてもポケミスで500頁超の大作が
2時間ドラマに収まるのであろうか?第一容疑者なんか、文庫で400頁弱が2時間
前後編の4時間がかりだというのに。どう考えても、エピソードを大きく刈り込んで
いるとしか思えない。それを確認するためだけに視聴するというのもなあ。そんな暇が
あったら読み残しの「蹲る骨」と「滝」を読まなきゃなあ。でも、分厚いんだよなあ。
まだ、コンテナルームに入れっぱなしなんだよなあ。ぶつぶつぶつ。
かたや「第一容疑者」の第1エピソードは何故かこれまで縁がなくて録画できていない
作品だったので、今回こそは捕獲するのだ、とココロに決めている。その実、
このシリーズで唯一観ているのがこの話というところが、積録主義者の積録主義者たる所以だったり
するのだが。
◆「QED−鬼の城伝説」高田崇史(講談社ノベルズ)読了
日本史に封印された怨念と呪を現代の殺人譚と絡めて解法するタタル説話もこれで9作目。このシリーズ、ここ2年はNHKの大河ドラマを少しずつ先取りする形になっているので、ひょっとして来年の大河ドラマは「桃太郎」だったりして。(>んなわけはない)まあ、前作「鎌倉の闇」は「義経」っちゅうよりも「北条時宗」ちゅう噂もありますか。
二代の当主の死を予告した「鳴釜」の伝説は、三度甦る。
密室状態の土蔵で首を切断された死体となって発見された鬼野辺家の長男。だが、それは、鬼野辺を襲う惨劇の序章に過ぎなかった。温羅伝説を追って、岡山に繰り込んだ、御存知QED一行を待ち受ける怨のDNA。桃太郎伝説に塗り込められた簒奪と殲滅の歴史が行き止まる闇の奥。扉は決して中からは開かない。
「吉備津の釜」といえば日影丈吉、「鳴釜」といえば京極夏彦ですが、タタル版鳴釜もなかなかのものであります。今回は、首切り死体に密室にダイイングメッセージとミステリのコードもたっぷり盛り込んでの1作。
一方「日本書紀」による歪曲と捏造の日本史を解き明かすという流れは、「式の密室」「竹取伝説」あたりが頂点で、この第9作では新味がなくなってきました。以前の騙り遺した宿題を果たすというレベルの熱の入り方でしょうか。
それにしても、このシリーズを読んでいると素直に子供に童話を語れなくなりますねえ。確かにどう考えても鬼は悪くないですもんねえ。
とりあえずそんなところです。
[NAGAYA v3.13/N90201]