今日のまぶた(1999年9月25日)

数日前から目にちょっとした痛みがあり、かゆみも少しあったので今日眼科医に行ってみた。

診察の結果、重い疾患ではなく、花粉症であるらしい。
アレルギーを抑える目薬をもらって差したら、症状は収まった。
春先だけでなく、秋まで花粉症になってしまったようである。

ところで、今日診察を受けていて、目を調べてもらっているときに「では下を見てください。まぶたをひっくり返しますからね...」と言われた。

「おい、ちょっとまってくれ...」

私は思わずそう考えてしまった。
もちろん、待ってもらう必要があったわけではない。

医師が目の診察をするときにまぶたをひっくり返して調べる場合、診察を受けている側の我々がそのために医師に待ってもらうことなどはなにもないのだ。

それでも、私はやはりそう思ってしまったのだった。
しかし、なぜそう思ってしまったのかは、すぐにわかった。

私は、その時、まぶたがひっくり返せるものだということを忘れていたのである。

私が小学校の頃、同じクラスに自分でまぶたをひっくり返すことのできるやつがいた。
そいつは、自分でまぶたをひっくり返し、ひっくり返したまま学校の中を歩き回っていた。
当時まぶたがひっくり返せるということはすごいことだったのかもしれない。そいつがやってみせたところ、俺もできると言ってやってみせるやつが何人かいた。

ただ、そのはじめにやって見せたやつも、まねしてやって見せたやつも、具体的に誰だったかということを覚えているわけではないので、もしかしたら、まぶたがひっくり返せるやつというのは不特定の何人かで、どのクラスにも1人か2人くらいはいたのかもしれない。

私は、自分ではまぶたをひっくり返すことができなかった。
別に、まぶたをひっくり返せるやつがすごいと考えた訳ではないと思うが、小学生というものは、やはり、ブームになっているものはやってみてしまうものなのであろう。しかし、私は、結局怖くてできなかったのである。

それ以来、かなりの年月が過ぎて、その間に眼科医の診察を受けたこともあるはずで、診察を受けたのだとしたら、まぶたがひっくり返されたこともあったに違いないと思われるのだが、おそらく、宣言してからひっくり返す医師がいなかったのであろう。
黙ってひっくり返されると、ひっくり返されても自分ではよくわからないのだ。

何年ぶりになるのかはわからないが、とにかく、かなり長い年月の間、まぶたがひっくり返せるものだということを忘れていたのである。

当時まぶたをひっくり返して見せてくれたやつらは、今どこで何をしているのだろう。
今でも、何人か集まった席などでは、ひっくり返して見せたりしているのだろうか。

小学校の頃の、何気ない一日である。


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