LDH (血清乳酸脱水素酵素) |
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220〜400W単位(SSCC法)
120〜380単位(ウロブレスキー法)
LDHは,乳酸とビルビン酸との変換を触媒する酵素で,体のあらゆる臓器にほぼ同等の濃度で分布しています。したがって,どの臓器が障害を受けても,組織(細胞)の崩壊の程度に応じて,LDHは上昇します。すなわち,LDHは臓器による特異性が低いものです。ゆえに,LDHの上昇がどの臓器に由来するのかを推定したり,特定したりすることはできません。逆な見方をすれば,LDHが上昇していれば,体のどこかの臓器に損傷があるシグナルということになります。LDHは,体を構成している細胞が糖質をエネルギーに変換するときに働く酵素で,肝臓,腎臓,心筋,骨格筋などの組織や,赤血球などに多く含まれています。このため,これらの臓器の組織破壊が起こると,障害のある細胞からLDHが流出し,血液中に増加します。症例としては,急性肝炎の初期や肝ガン(特に転移性のガン)のとき,顕著に上昇します。しかし,LDHは心筋梗塞や悪性貧血,または,肺,膵臓,大腸などのガンでも高値になるため,この数字だけで肝臓が悪いと診断はできません。そこで,より正確な診断をおろすためにアイソザイムを調べます。
LDHには,LDH1〜LDH5までの5種類のアイソザイムがあります。アイソザイムとは,同じ反応を触媒する酵素であるのに,分子構造の異なる物理・化学的性状に相違のある酵素群のことです。体の臓器は,そこに含まれるLDHのアイソザイムの割合(パターン)が異なっていますから,そこのアイソザイムを調べることで,ある程度,どの臓器に障害があるかを推定するのが可能になります。
LDHの測定値は,年齢,運動量,その他いろいろな要因で,生理的な変動をみることができます。例えば,生まれたての赤ちゃんは成人の2〜10倍の値にありますが,14歳前後までは次第に低下し,以後は成人値になります。性別による値の差はありませんが,女性の場合,妊娠後期には上昇します。そして,出産直前には2倍になります。運動量については,軽作業で10〜20%上昇,過激な水泳,ジョギング,スキーなどではさらに上昇します。
考えられる病気は,高値のとき肝臓,心臓,悪性腫瘍,血液,骨格筋,肺,腎の病気となりますが,LDHアイソザイムでの病気の大別は下表のとおりです。
急性肝炎 | 0 | 0 | 0 | UP小 | UP大 |
筋ジストロフィー | 0 | UP中 | UP小 | 0 | 0 |
悪性貧血 | UP大 | 0 | 0 | 0 | 0 |
転移性肝ガン | 0 | UP小 | UP小 | UP小 | UP中 |
肺梗塞 | 0 | UP中 | UP中 | 0 | 0 |
心筋梗塞 | UP大 | UP小 | 0 | 0 | 0 |
溶血 | UP中 | UP中 | 0 | 0 | 0 |
LDHの上昇だけで,障害を受けた臓器の特定することはまだできないときは,他の酵素(GOT,GPT,ALP,CPKなど)の検査値と組み合わせて診断が行われます。