結論からいうとバリで会社を作るというのは非常にリスクが多い。というのも日本と違った生活習慣で目に見えない諸費用が掛かったり、手続きに要する時間的なフローチャートも個々によって様々である。したがって、計画どおりにいくかどうかは、本質を見抜く力がないと難しい。あまり、お薦めはできない。



「会社を作るためのQ&A」-手続・費用・書類-



インドネシア(バリ)で会社を創るとすると、どんな手続、どんな書類、費用が必要か。

はじめに

インドネシアにおいて、日本企業の進出形態としては、(1)駐在員事務所、(2)支店、(3)現地法人が考えられるが、支店については銀行及び法定の鉱業に限定されており、通常認可されない。今後進出の考えられる(1)駐在員事務所と(2)現地法人の設立についてみていきたい。

(1)駐在員事務所設立


駐在員事務所は、販売促進、市場調査、商品展示などを行うことが出来るが、自己名義での契約の締結、輸出入取引などは禁止されている。但し、公共事業管轄下の特別駐在員事務所の場合は、現地法人とジョイントオペレーションを組むことにより、営利活動が認められる。(特別駐在員事務所は、建設及び建設関係コンサルティング業種に認可されるものである。)
一般の駐在員事務所開設の窓口は商業省商業局であり、保証金、管理料を支払う。また、開設後一定期間毎に商業省に事業活動報告等を行わなければならない。手続は、商業大臣布告「外国商社の代表部の事業許可証に関する規定」に規定されている。

簡単にまとめると以下の通りになる。

1)必要書類(以下の書類を商業省に提出する)


@申請書(インドネシア語)

A LETTER of INTENT(事業所を開設する理由を明記したもの)

B会社概要 CLETTER of APPOINTMENT(駐在員事務所の活動を明記したもの)

D駐在予定者の履歴書とパスポートのコピー、写真 E定款 F決算報告書

GLETTER of STATEMENT(活動範囲を示したもの) H税務登録番号(NPWP)

−申請書、委任状(第三者による代行手続の場合)、 所在地証明

@ABCDGについては、日本各地の商工会議所で認証を受けた後、在日インドネシア大使館商務部の審査を受け、証明書の発行を受けること、Eについては、日本の商工会議所の認証と公証人の署名を受けること、Fについては、日本商工会議所の認証を受けることが必要とされる。Hについては、税務当局に提出する書類であり、会計事務所が代行する。尚、申請書には「駐在員は商活動を行わず、販売促進にのみ従事すること。当該企業はインドネシア商品を買い付けていること」を明記するとよいと言われている。

2)駐在員事務所開設フロー
申請書提出後、3ヶ月有効の仮許可書が発行され、その時点で次に取得が必要な文書(バリ州の事務所開設許可書、労働許可書、滞在許可書等)が指示される。

開設許可申告(商業省)→仮許可書→事務所所在地のライセンス、

保証金及び年次管理金の納入

事務所ライセンス取得、

税務署への届け出、労働許可申請


(2)外資(PMA)企業設立手続き

インドネシアにおける会社設立の手続は、一般的に投資調整庁(BKPM)が窓口となっているがこの他、銀行、証券会社等の特定分野に関しては、大蔵省等の関係官庁になるケースが存在する(駐在員事務所は商業省、前述)。

インドネシアでは商業部門における外資企業(現地法人)の活動が禁止されており、支店の新規設置も認められていない。既存企業への出資・資本参加については、数がないものの認められている例もあるが、100%出資は認められていない。

現地法人の設立についても、原則として100%子会社は認められず、合併企業形態をとることになる。輸出奨励などの政策上、設立時のインドネシア側持株比率が低くても承認される場合があるが、一定期間内に引き上げなければならないという条件が付くのが一般的である。


1)事前準備

投資調整庁(BKPM)や現地のコンサルタント会社、日本での関連会社等から投資調整等(BKPM)公布のネガティブ・リストを入手し、予定している投資分野が外資参入可能か否かチェックする。外資禁止の事業分野に記載されているようにみえても、輸出志向型などの特定条件下で外資参入の認められるものもあるため、詳細は、BKPM や会計士、コンサルタントなどの専門家の説明・指導を受ける必要がある。外資参入可能となれば、現地側合併パートナーの選択、必要書類の準備などを開始する。
2)必要書類(BKPMへの投資申請には、以下の書類を要する)

@投資申請書(記入事項は、株主公正/比率、投資金額、予定事業の概要など)
A外資と現地の合併契約書(草案可、スタンダードなサンプルをBKPMやコンサルタント会社から入手出来るので参考にするとよい)

B申請書著名権限のための委任状(在日インドネシア大使館で承認印を受ける)

C各パートナー年次財務諸表 D各パートナー定款

Eインドネシア側パートナーの税務登録番号(NPWP)F事業工程の説明とフローチャート

G公害防止対策の概要 H各パートナーの取引銀行からの紹介状

I特許、ライセンス等の予定があれば、これに関する契約書

上記書類一式を7部用意してBKPMへ提出する。また予定敷地が一定面積以上となる場合には、BKPMの地方局から承認状を取得しなければならないので確認が必要である。


3)大統領許可(SPT)の発行


上記書類が、正式にBKPMへ提出された後、BKPM関係官庁で検討されBKPMを通じて大統領認可(SPT)が発行される。所要期間は提出書類の完璧さにもよるが、手続過程でのBKPMとの連絡調整を行う担当者(弁護士やコンサルタント会社等の代行がほとんど)の力によって大きな差が生じてくる。代行者の人選等には、事前に充分な検討が必要である。

4)大統領認可(SPT)受領後の各種手続き

@マスターリストの申請
輸入予定機材の関税、付加価値税免除の特典を受けるために、既定の申請書に機材のリスト、価格、説明等を記入し、またパンフレット/写真、工場内での設置図面、フローチャート等を添付の上、SPT受領3ヶ月以内にBKPMへ申請する。
A定款の登記
公証人の準備した定款を法務省へ登記する。理論的には、法務省から最終的な認可を受けるまでは、正式に会社が設立されたことにならないが、時間のかかることが多いため、実際には並行して他の手続きや、投資活動を開始する例が多い。法務省登記の所要時間も、手続き担当の公証人などによって大差が見られる。
B外資系(PMA)銀行口座の開設
資本金やオフショアローンを払い込む特別口座を設ける。設立当初の資本は、最低授権資本の20%が発起人により引き受け済みで、このうち10%以上が払い込まれることが原則であるが、PMA企業の場合は、その後の払込み資本のスケジュール等、BKPMの許可を受けたスケジュールに従うこととなる。PMA口座は、国営、民間の外為銀行で聞くことが出来、SPT、定款、税務番号(後述)等の写しを要するのが一般である。
C税務番号取得
税務当局からの申請書にSPT、定款、申請者の身分証明書(パスポートなど)の写しを添付して提出する。原則的には法務省での登記終了後に申請するのもであるが、登記に時間がかかることが多いため、一般的には登記手続き過程である旨の説明書を付けて、手続きを進める。さらに、付加価値税対象企業(ほとんど)は、同時に付加価値税の登録も行う必要がある。
5)工場用地の確保
インドネシアでは、多くの土地に関し登記がされておらず、売買が大変困難である.また、政府の登記記録が不完全なため、一つの土地に対して多数の者が所有権を主張するなどの問題が多々存在する。土地所有権はインドネシア国籍の個人にのみ認められ、法人には認められていない。これは、国内企業であるか、外国投資(PMA)企業であるかにかかわらず、法人が土地を利用する場合には、次のような権利を取得するかたちがとられる。
@開発権(国有地を農業、水産、牧畜などに使用する権利)

A建設権(国有または私有の土地の上に建物を建設し、この建物を所有する権利で、

通常、20年から30年の有効期限が与えられ、その後、期限延長をする方法がとられる。また、公団、民営の工業団地の利用も可能である。上述の土地権利を購入するにあたり、オーナーと会社間の売買契約内容を土地局へ提出し許可を受ける。その後、取引契約が成立した時点で、権利書(CERTIFICATE)の入手と登録を土地局へ申請する。また権利購入の概要をBKPM地方局へ報告する。


6)その他(BKPMを通じて以下の必要許可/ライセンス等を入手する)


○パーマネント営業ライセンス(IUT)○機材等輸入登録ナンバー(APIT)
○国内調達ライセンス(IPONT) ○外国人の労働許可

○環境保護データ・シート

○土地権利の承認

○工場等建設予定地のライセンス(土地が計画都市、道路建設予定地、住宅地域等でないことが確認され、予定の事業に利用されるための許可)

○その他(投資/事業の内容によって様々なライセンスを必要とする場合もあるが、手続きは、一般的に大変複雑であり、弁護士、会計士、コンサルタント等専門家に任せる必要がある。)


7)労働許可(WORK PREMIT)

省略

8)現地法人の設立手続きのフロー

合弁契約の締結
 ↓

投資申請(投資調整庁:BKPM)

添付書類:

@申請書署名権限のための委任状 A年次報告 B外国企業とインドネシア企業の定款 Cインドネシア企業の税務番号 Dジョイント・ベンチャー契約書(草案でも可)E事業工程の説明書 F公害防止対策の概要 G特許、ライセンス、技術補助などに関する書類 H取引銀行の推薦状
 ↓
投資許可

 ↓

登記申請(法務省)
定款の認証→認証後の定款の提出

 ↓

登記完了

 ↓

税務署への届出、銀行口座開設、労働許可申請


なお、投資調整庁の許可受領後、投資調整庁長官に次の報告義務を有する。

(a)投資計画、建設の進捗状況報告書を提出する。
(b)操業開始後は、生産状況の年次報告を提出する。

 

最後に
現地での投資申請にかかる費用は、主に各種契約書作成にかかる弁護士、会計士、コンサルタント等の専門家による料金であると言える。官庁への登記料金、印紙税、官報への公告費用などは比較的安価である。

現実的に一番障害となっているのは、日本では考えられないインドネシアの習慣的要因からの各種費用が生じてくることやプロセスの進捗状況に一定の決まりがないことである。前回何の問題もなかったことが、ある時にはひっかかったり、前回問題になり大変だったのでそれを見越して手を打っておくと杞憂に終わったりする。さらに異文化の中でのコミュニケーションのため、問題になった事象が単なる訂正要求なのか、その裏に違う要求が隠れているのか本質を理解するのが難しい。

実際にコンサルタントにあたってみた所、状況(担当者等)によって所要時間等に大差がでてくることがある。その状況を理解できないのが日系企業に多く、トラブルの一因になっているという。政府規定でさえ、解釈により異なる灰色部分が多く、日本のようにはっきりしていないのがこの国の真実なのである。また、各々根本的考え方の概念が大きく異なっていることを前もって認識し、「文化・習慣・言葉は違っても、人間同士きっとわかりあえる」というメンタリティは、この場合に限って棄てた方がいい。

個人的には、多少高くても、コンサルタント等のプロを雇われることをお勧めする。後になって、当時は高く感じたが、最終的にはこの方がよかったという話をよく聞くからである。独力でがんばり、工場建ち上げ担当の日本人スタッフがまいってしまい、開設時には日本の病院のベットにいたなど笑えない事実が存在する。        以上

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