シカ




ここはGH通称 ”さとう山” 。 そして、シカを求めて山頂まで
たどり着いてしまったGH偵察隊。
ワタシが初めてさとうさんに案内された時、足元からイノシシが
飛び出した山だ。
シカやイノシシを求めて山に入るには、まず地形を覚えるのが
第一歩となる。
我々GH常時メンバーだけでも10人以上は集まる事が出来る
ので、我々だけでも大物の巻き猟は可能なんだけど、メンバー
の誰かしらが参加しているグループにGHの中から数人が加わる
事が多い。 やはり、ベテランの経験者にはかなわないのだ!
しかし、ワタシらは時間がある時は、我々だけで出来る山を探し
たりする事もあるし、高齢化が進んだグループに誘われて、
お手伝いを兼ねて修行をさせてもらったりもする。

ところで巻き猟(巻き狩り)とは、獲物を追い出す役とアンブッシュ
に分かれて大物を獲る方法で、大物の銃猟では一般的なのだ。




そして、さとうさんが助っ人をするグループへもワタシは
何度かお邪魔させていただいた事がある。

そんな時は、ワタシも若手って事でセコ(追う役)になって、
ツラ〜イ山の斜面を歩く事が多々あった。 
勢子3名は横に広がって山の斜面を巻くように攻める。
ワタシも転がるように這いつくばりながら歩く。

「もうここはシカはいないね。」と言う事になって、ワタシは
斜面の下のさとうさん側に下りる事になったが、なんたって
ソコは急斜面。 アタシゃ20mほど滑落する事に・・。
そしたら、下まで一瞬で滑り下りたワタシの先で銃声が!
ワタシとさとうさんの間の藪からシカが飛び出て、それを
さとちゃんが撃ったワケ。 勿論、射撃OK中だからね。
ワタシがズッコケなきゃ、シカは出なかった・・・。
さとちゃんがソコにいなきゃ、シカは獲れなかった・・。
大物猟って、そんな協力関係なんですねぇ〜。










一方、GHコードネーム "たむさん山"。
たむさんの親方とたむさんに、ワタシといださんは特別に修行を
させてもらう事が何度かあった。
単独・犬無しでバンバン大物を獲っちゃう、たむさんと親方だ。

ここでは、我々はタツ、つまりアンブッシュ役を受け持つ。
もともとその山を熟知しているたむさんと親方なので、タツ無しでも
毎年いっぱい獲ってるんだけど、タツが若干名でもいれば、確立が
いっそう高くなるからなのだ。
「んじゃ〜、2人のトコに追い出すからね、絶対撃てるよ!」と言う
たむさんの甘〜い言葉を受け、ワタシらが良い子でアンブッシュし
てると、山の中からドカァーン!ドカァーン!ドカァーン!と・・・。

無線で、「何かいたんスかぁ〜?」と問いかける。
「ゴメン、ゴメ〜ン・・。 Joe-Shoeさんの方に追い出そうとしたら
自分の前にシカがいたもんで♪」 ・・・流石だ、忍びのたむ!






そして、全員が合流する。
「すぐ近くに転がってるから、一緒に運び出してよ♪」
状況を良く聞けば、たむさん1人でも獲れたシカなのだ。
むむむ、これがモーレツ親方仕込みのなせるワザか!?
それでも運び出したシカを見て、親方は 「あららら〜、
ドコを撃ってるんだよ? もっと前足の方を撃てよ!」
「・・はい。すんませんっ。」 ワタシから見れば、単独の
忍びでシカを獲っちゃうたむさんはスゴイんだけど、なんか
ちゃんと獲ったのに文句を言われてる姿がオモシロかった。


たむさん山で獲れたシカは解体場所まで運ぶが、その
シカはすぐには解体しないのだ。
雪や雪解け水を利用してシカを翌週まで熟成させる。
内臓だけを取り出して、そのシカを保存する地点まで運ん
だりする作業が結構シンドかったりするけど、たむさんは
まるで買った肉を冷凍庫にしまう感じのように行う。











まるで2頭を仕留めたように写ってるワタシ。
しかし、これもたむさんと親方の手で撃たれたシカなのだ。
ワタシが何より驚いたのは、たむさんと親方が山の地形だけで
なく、石の配置や木の位置を細かく記憶していて、自分の家の
間取りを説明するように熟知している事だ。

なにより、何十年もかけて通って通って通いつめて、地元の
人とも親しくなり、このヘンに来るハンター達は殆ど知り合い
だと言う親方だけど、あと少しで引退するかもしんないから、
今はたむさんを徹底的に指導して引き継がせるんだって〜!

むむむ。・・って事は次はたむさんが親方じゃん!?
「たむさ〜ん、そしたら、そん時は頑張ってね〜!」と言ったもの
の、「いやいや、何を言ってるんですかぁ〜。 そん時は、一緒に
やって貰わないと困りますよぉ〜!」・・・と。
「だってワタシ、たむさんのようにタフに山を駆け回れないし〜ぃ、
ついていくのもやっとだし〜ぃ、ほら、体が弱いし〜・・」と、言って
みたけど、鼻を上に上げてニタっとたむさんはこっちを見てた・・。




「あ〜あ、ぜんぜん撃てないよぉ〜・・。」
ある時ワタシがスネてたら、たむさんと親方が、アノ場所なら
どうの、ソノ場所ならどうのとか何やら相談し始めた。
「折角来てくれたから、今日はちょっと歩くけどいいかい?」
ワタシはその ”ちょっと” ハードな場所までついて行った。
着いてみると、「え? 何じゃココ?」 ってな場所だった。
「じゃ、向こうからシカが来るから、ココで撃ってね〜♪」と。
・・・ホントにこんなトコにシカが来るのかいな?と、ワタシは
しばらく黙って待っていた。 ・・・・・すると。
バッサバッサと馬のギャロップのような音が近づいてくる!
そして気がつくと、ワタシの目の前に大きなオスのシカが!
その時お互いに、「・・あ、シカだ。」 「・・ア、ニンゲンダ。」
と、確認と同時に、「撃たなきゃ!」 「ニゲナキャ!」でワタシ
のバックショットの発射の方が早かった。
お蔭様で、見事なシカを獲らせてもらっちゃいました♪
つ〜か、ど〜やってその場所にシカを出したの? スゴイ!













熟成・保存していた先週のシカを運び出し、解体する。
この方法は臭みが見事に抜け、肉も締まるし血も抜ける。
食べ比べても、こっちの方がウマかった!
凍らせて刺身にするなら獲れたてだけど、ステーキとか
ローストとか加熱調理なら断然に熟成上州鹿なのだ。

イノシシに比べれはシカは脂が少ないけど、それでも
一頭丸々解体するのに、ナイフは何回か研がなければ
ならない。
この写真の時は解体ノルマが一人一頭だ。
上手な解体の指導はやっぱし親方だ。
彼は元々の仕事が料理人なので肉とか食材についての
ノウハウはたっぷりだし、シカを捌くウデも良い。
「ちょっと貸してみな? ここは、こ〜やって、こ〜に・・・」
「おぉぉ!さっすが〜、おやかたぁ〜♪ もっとやって見して〜♪」
と、ホメて全部やってもらおうと思ったが、すぐにナイフを
返された。 「はいは〜い。 自分でやってね〜。」





解体場所の火の気の安全なトコで、簡易キッチンが出来る。
たむさんの親方は、ワタシらがシカを解体したそばから、
ひょいひょいと品定めして、少しずつ肉を持ち去って行く。
何故ならば、我々にシカ料理を食べさせる為だ。
昔は板前さんだったと言う親方なので、ウデと味は良い。
そして我々は、行く度に料理をご馳走になったのだ。

大人数での大物猟も良いけど、少人数での大物猟も、
それはそれで楽しいものだ。
そして、結果として獲れたならば、尚更楽しいハンティング
になるだろう。
何より安全が第一で、猟果は二の次で構わないのだ。
猟欲のみで突き進むと、取り返しのつかない事故等の元に
なるのは、火を見るより明らかなのだ。
そして、大物猟への参加が義務的になると、過労などから
交通事故や健康への影響にも繋がりかねない。
結局、趣味であり、遊びである事が大前提なんだから。








さて一方、このシカはGHコードネーム ”あべべ山” のシカ。
これもやっぱりデカイですね〜!
走り疲れたこのシカは、イノシシを枕に永眠しているトコだ。
これを撃ったのは、あべべ山・ベテラン組のハンター。
シカでも何でもそうだけど、肉は正直言ってメスの方がウマかっ
たりする事が多い。
しかし、特にシカの場合、オスの角はハンターにとって勲章の
ようなモンだから、立派な角のオスが撃てれば非常に嬉しいのだ。

あべべ山の場合、敵はイノシシ、クマ、シカの混成部隊だから、
特にシカ狙いだけでイケるワケじゃない。
イノシシの足を睨んで山を取り囲んでも、シカが出てくる可能性
もあるし、場合によってはクマだったりする事もある。
でも、大体どこもそんな感じだと思う。
が、アンブッシュ役の人達の脳裏には、それぞれ理想の獲物が
浮かんでいる事に間違いないだろう。



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