■ MSS20 ■
1.スラッグの血統
ライフリングを持たない日本のスラッグショットガンの 中で、最も命中精度が高いと言われているのがミロク のMSS20だ。 新型は交換チョーク式になっているが、旧型は固定 チョークのシリンダーバレルとなっている。 今回のモデルは旧型のモデルだ。 見た目で新旧が大きく違うのは、バレルの長さくらいだ と思う。新型はチョークの都合なのか、フロントサイト 近辺からマズルにかけて旧型より長い。 じゃぁ、どっちが良いのか!?と思うでしょ? 実はソコは人によって意見が違う事が多いのです。 まぁ、どちらにしても普通のショットガンに比べれば ハイレベルな話だから、そんなに気にせんでもエエ。 どっちも、50m先のタマゴを狙える銃には変わりない。 |
||
迫力のマズル! MSS20は、パっと見はライフルのようだ。 しかし前から見ると約15mmのデカイ穴が開いて いるのだ。20番のこの銃はデザイン的にも美しい 仕上がりになっている。 横から見ただけじゃ、ブルバレルのライフルにしか 見えない。 しかし、美しいバランスのお陰でまとまって見える この銃のバレルは、レミントンM870の12番の バレルよりも太いのだ。 つまり、そんだけ肉厚なバレルになっている。 肉厚の女は歓迎されないが、銃の場合、肉厚の バレルは歓迎されちゃうのだ。 |
||
ガンラックに置いても実にエレガントな銃だ。 オーナーもエレガントな人に違いない。・・・と、思ったら どっちかっつうと、エレファントって感じだった。 たかさんのMSS20は、貫禄あるハンティングライフル のような風格を持ちながらも、繊細な美しさがある。 まぁ、別にオーナーは誰でも良いのだが、そんな 銃を両隣の12番と比べると、ガッシリしたバレルである 事が良く分かる。 MSS20は、決して全長が短いとは言えない。 つまり長いのだ。しかし、何故だか苦になる重さでは ないように感じる。むしろ、決して重くない銃なのだ。 しかし、これを持って山を歩くとなると少々体力が必要 になるかもしれない。 射撃場や待伏せの猟には良いかもしれないが、銃の 性格上から見ても歩き回るハンター用とは言えない。 ちなみに立って構えてみると、初めてフロントヘビーだと 気付く事になる。スコープを外せば、持った時点でフロ ントヘビーだと分かるだろう。 |
||
ストックの木目はどんな銃でも全て違う模様だ。 まるでワタシら人間の人相のようだ。 似ているようで同じものは2つとない。 美しくポリッシュされ、真っ黒なガンブルーに仕上 げられているこの銃には、木ストックが一番だ。 実際フィールドでこの銃を使うなら、チークパッド を兼ねたストックカバーは必須になる事だろう。 |
ショットガンのリアサイトは、省略されている場合や 付いていても申し訳程度の物が多い。 しかし、MSS20のリアサイトはライフル同様の凝った 作りの物が装着されているのだ。 もっとも、スラッグ銃身であれば同様の感じの物が 装着されている場合が多いが、この銃ほどサイトを 信用出来るショットガンは少ないかもしれない。 このリアサイトは、上下左右を細かく調整出来る構造に なっていて、WILLIAMS社製である事が刻印から解る。 そして何より、このリアサイトが装着されている本体 とのバランスを照らし合わせてみても、実に自然な ものに見えるのだからスバラシイ。 まぁ、好みや使い勝手で他の物に付け替えちゃえば 話は別だけどね。 |
||
太いバレルに乗ったフロントサイトを見ても、このまま ならライフルと言っても解らないだろう。 逆に、バレルが太いおかげなのか、フロントサイトが 頭デッカチに見える事はない。 このフロントサイトは他にもよくある左右にアジャスト 出来るタイプだ。 ただ、リアサイトからフロントサイトが遠いせいなのか、 それともフロントサイトが細すぎる為なのか、狙ってみ るともう少しフロントサイトの幅を厚くしても良かったん じゃないかと思ってしまう。好みもあるだろうが・・・。 まぁ、イヤだって人はこれも付け替えちゃえばいいだけ の話なんだけどね。 |
||
写真だと解り難いが、狙ってみたトコの図なのだ。 鈍角のVノッチのリアサイトの底にホントのノッチがある。 そこにフロントサイトのテッペンの丸くなっている所を合 わせれば良いのだ。スコープマウントも邪魔にならない。 しかし、リアのノッチの中でフロントサイトが若干左右に 泳いでしまう。と言っても、大抵の銃のサイトはそんな もんだ。このノッチは他のタイプに交換出来るハズだけ ど国内ですぐに部品が出るかはアタシゃ知らない。 ただ、これに関してはMSS20なだけに、もっとシビアな サイトでもいいんじゃないかと思ったりもした。 でも、スコープを装着するのが一般的な銃のクセに 非常にレベルの高いサイトが着いてるとアタシゃ思う。 また、もしオープンサイトに慣れた人なら、スラッグの 射程を考えてみても無理にスコープを着ける必要も ないんじゃないかとも思えてくる。 |
||
ボルトを見ると、やはりライフルより太い。 側面には軽量化の為か、飾りの為か、作動 を軽くする為か解らないが、ライフリング痕の ような深さ1mm程の溝が彫ってある。 銃に装着したボルトを引いてみると、非常に 軽やかな動きだ。 例えばボルトにゴミが付着しても、この溝が ゴミを受け止めてくれるおかげで作動を邪魔 する事もないのだろう。 |
||
細長い小判型のレバーは、ボルトを脱着する 為のものだ。ボルトアクションの銃には形や 操作が違っても、このレバーはあるのだ。 ・・・と言うか、無ければ困る。 この銃の場合は、レバーを押し込んでやると 簡単にボルトを引き抜く事ができる。 ボルトを装着する時はその逆でいい。 しかしボルトアクションって、保管する時の 安全管理なんかは一番楽チンじゃないかな? だって、スポッ!とボルトを抜くだけでしょ? ちなみにこのMSS20、大きいボルトのクセに 操作した感じではガタが少ない。 |
||
トリガーガード前方のボタンを押す事で、マガジンは リリースする事が出来る。 リリースしたところで、カバーと一体となったマガジンが デロ〜んと出て来るだけなのだ。ボルトをオープンさせ れば、上からでもタマを装填出来るけど、デローン状態 のマガジンに直接装填するのでも良い。 マガジン底部の、銃に向かって前方はヒンジになって いてマガジンが勝手に銃から離れる事はないのだ。 何だか、あんまし意味の無い構造をもつマガジンかも しんないけど取り外し可能なマガジンと違って、なくなん ないからいいのかもね。 ワタシの感想では、このシステムは特に必要なもので はない感じがするのだ。 |
||
ボルトを抜き取ったところを上から眺めてみる。 ボルトが無いと、シアーが良く見える。 このMSS20のボルトとシアーは、他のボルト アクションライフルと何ら変わりはない。 最初はライフルを作ろうとしたけど、やっぱし ショットガンにした!って感じもする。 後部に赤いポッチが見えるが、ソコんとこの ボタンはセフティーなのだ。 構えた状態からでもセフティーのONとOFFの 確認は不便を感じない。 それと、ボルトを装着した時にフレームとボルト のガタはヘタなライフルより少なく、カッチリと 仕上がったショットガンなのだ。 |
||
MSS20のバレルドアクション、つまり本体。 バレルドアクションなんて言葉はアタシゃ使った事が ないが、こんな姿を見ると、"本体"って言うより"バレル ドアクション"って言った方がカッコ良く聞こえる。 この状態であっても、ボルトとタマがあれば発射する 事は出来るだろうが、そんなヤツはいないと思うし、法 に照らしても問題があると思う。 万一、ここまでの分解を猟場でする事になって、もし その時に鹿が現れたならこのままブン殴った方が早い。 実に高価な狩猟用鉄パイプなのだ。 "バカも休み休み言え"と言う言葉があるので、少し バカを言うのは休むとしよう・・。 この銃はスラッグの命中精度は高いが、ショットガン であるワケだし、精密射撃のライフルのように本体と ストックのスリ合わせを非常に気する必要もないだ ろうと思う。 |
||
トリガーシステムが良く解る。 ・・・いや、やっぱし良く解んない。 実はこの写真は、このMSS20のオーナーの たかさんが送ってくれたもの。 「バラしたトコだよ〜」と折角送ってくれたので 掲載する事にしたのだ。 興味のある方は、右の写真をよ〜く見て 自助努力で解析してもらいたい。 ただ、トリガープルについて言うならば、 これがまたヘタなライフルの比じゃない くらいに素晴らしいのだ。 チューニングした、コルトガバメントのようだ。 遊びは少なく、ギュッとテンションをかけると ポキン!と、まるでトリガーが折れた感じの 爽快感を感じる引き心地なのだ。 |
||
トリガーには指先ではっきり感じられる程のミゾが 加工されていて、トリガーフィンガーが滑る事はない。 トリガーの幅も広く、ヘタなライフルにはこのショット ガンのトリガーを見習ってもらいたいモンだ。 ワタシが想像するところでは、もし初めてMSS20の トリガーを引いた人は全員が「やっぱりな!」と言う。 そんくらい、カッチリ・シッカリしたトリガーなのだ。 トリガーガードの前方にあるボタンは、先に紹介している マガジンリリースボタンだ。 トリガーガードの形状は好みもあるだろうが、ワタシゃ 別に気にならない。と言うより、良いデザインだと思う。 ただワタシの意見としては、トリガーは黒がエエ。 |
||
セフティーとボルトの間に見える赤い四角は コッキング・インジケーターなのだ。 つまり、ボルトハンドルを起こしてストライカーを コックすると、赤いボッチが顔を出して激発状態 にある事を知らせてくれるのだ。 勿論このインジケーターはトリガーを引いて ストライカーが前進すれば姿を消す。 どんな銃でもそうだけど、機関部周辺に"赤"が 見えた場合は激発可能状態又はセフティーが オフの状態なのだ。 皆さんも、ご自身の愛銃を眺めてみると良い。 セフティーは必ず、”赤=発射”のハズだから。 ・・・おぃ!誰がジッパー下ろせって言った? |
MSS20のベストマッチング・アモとして定説になって いるのがAPOLLOのスラッグ弾だ。 さぞかしバレル内にぴったしフィットするのか!と、思う 人もいるだろうが、そうでもない。 バレルに弾頭を通すと、案外抵抗なく抜け落ちる。 むしろこんなにスカスカで良いのか?と思ってしまう。 恐らく、発射時にこのフォスター弾頭の外周の膨張と バレルの密着度のバランスが良いのだとアタシゃ考え るんだけど、他にも一体型バレルドアクションである事 の恩恵も大きな要因の一つだと思う。 チェンバー、スコープ、バレル、これらが一体だしね。 それにバレルの長さもバランスが良いのだろう。 |
||
この銃の操作についてはあえて言うまでもない。 しかし、善人を取り繕ってあえて言ってみるのが ワタシの良いトコなのだ。 まずボルトハンドルを上げてボルトを後方に引く。 そしたらタマをチェンバーに入れてボルトを元の 位置に戻す。その時にマガジンにもタマを入れる 事は勿論可能だけど、レンジでは安全の為に単発 で射撃する事が多い。・・・ただマガジンにいちいち 装填するのが面倒臭いって事もあるんだけどね。 つまり、ボルトを操作して装填・排莢するのだ。 写真は、"たかさん"が射撃をしているトコロだけ ど、この写真はスコープで着弾の確認をしている ところなのだ。よく見るとボルトを開放しているの が解る。GUNHORSEの皆さんは銃の安全管理が ちゃんと出来ててアタシゃ感心しますよ。 |
||
アポロのフォスター弾頭と、ブリネッキ弾頭。 言っちゃ悪いが、このブリネッキは決して高い方の 弾頭ではない。 果たしてどちらが当たるのか!? これもシューターの主観が大きく影響して、何を もって当たるかと言う事が問題になる。 たかさんの感想では、「アポロの最小グループより もブリネッキの最小グループの方が小さいが、ブリ ネッキはたまにフライヤーが出る。5発撃つと4発は 同痕になるけど1発は少し離れる。 アポロは握りこぶし内には集弾する。 ・・・どっちが良いとも言えない。」との事なのだ。 ただし、リロードの手間ヒマや個体のバラツキ、又 コスト等を考えればやっぱりアポロと言う事になる。 |
||
MSS20のバレルはスムースボアのシリンダーなので サボット以外なら大抵のタマは発射出来る。 スキートもMSS20で撃ってる人をアタシゃ目撃した。 サボは撃てないワケじゃなくて、撃っても完璧なまでに 横転して当たらないだけなのだ。 まるでクロームメッキのようなピカピカのそのバレルに ベストマッチな弾頭を探し続けるMSS20オーナーも 多いだろうが、結局はアポロに落ち着く人が多いと言う 話だ。やっぱり、この業界の人達は自らが試してみて 「あの本に書いてある事は正しい」とか、「噂通りだ」と 初めて結論付ける性分の人達なのだ。 |
MSS20はライフル代用のショットガンとしてではなく、 スラッグガンとしての確立した存在であると思う。 この銃は20番である事の撃ち易さと、スムースボア ショットガンとしては最高部類の命中精度を生み出す。 ハンティングライフルのグルーピング射撃に飽きた人 なんかには、もしかしてこのMSS20の射撃は新鮮 に感じるかもしれない。 50mなら、ヘタなライフルより当たる。でも、まともな ライフルよりは当たらない。当たるワケが無い。 スラッグ射撃は適度なルーズ加減が楽しいのだ。 ワタシの感覚で言うと50mのスラッグ射撃は、何となく 25ヤードのハンドガン射撃に似ている気がする。 精密射撃のように点を狙ったり、ベンチレストのように グルーピングのみを追及するのではなく、ターゲット を狙ってある程度のトコロに当てられるように練習し、 ある程度に当たればそれで良しとする。 アナタもボルトアクションのスポーツシューティングの 世界を覗いてみては如何だろうか。 |
Guns , Shooting and Hunting website GUN HORSE |