Benelli ARGO



  


 

   1. 新世代ライフル

Benelli社が世に送り出す銃の中で特に斬新なデザインで
人目を引きつけるのは、この"ARGO(アルゴー)"だ。
30-06、300-WM、9,3x62,、7x64,、308Win の口径が選択
出来るセミオートマチックライフルなのだ。
重量も約3.2kgと軽量で、大きさからしてもライフルと言う
よりカービンとも言えるコンパクトな銃だ。
実際にコンパクトではなくても、コンパクトだと感じさせて
しまうのはベネリの作戦勝ちかもしんない。









グリップの下部にBenelliのマークが彫ってある。
言っちゃ悪いが、こんなトコにマークがあっても射撃場の
ガンラックに立てかけた時くらいしか見えないハズだ。
・・・そうか!立てかけるとマークがちゃんと見えるんだ!
と言っても、知る人ぞ知るマークなので、知らない人が見
たら「何じゃこのイタズラ彫りは?」って思っちゃうかもしん
ない。子供の頃、学校の机にイタズラして掘ったヤツだ。
ちなみにアタシゃ〜彫り過ぎで先生に叱られ、タミヤの
パテで埋めて、自分でバンキンしたのを覚えている。
・・・ゲージツ家はいつの時代も理解されないモンなのだ。




バレルを包み込むようなフォアエンドはスリムに見える
けど、横から見るのと縦から見るのとでは違う。
構えてみても、手長ザルになる事もないしフォアエンド
のスリムさを気にする事は全くない。
細かなチェッカリングの恩恵も手伝って、実に手にシッ
クリとくるのだ。人間工学のデザインだ。






ARGOは流線型で構成されている銃だ。
昔の銃のように、必要機能の結成が曲線美となった
ワケではなく、ハナっから流れるようなプロポーション
を与えられたのだ。
この銃のデザインを一言で言えば、"人間工学"と言
ったイメージだ。
ベレッタにしてもそうだけど、イタリアンデザインを多大
に盛り込んだ銃が多いのはイタリアならでは。
そのうち、ピニンファリーナやジウジアローといった
デザインの銃が出てきたりして・・・。







デザイン以外に何も考えてないようで、実は良く考えら
れているリアサイト。
車にしても、イタリアはまずデザインから考えて、ドイツ
は機構から考えるイメージがワタシゃ強いのだ。
このライフルも、こんなデッかいリアサイトが必要かと
思うだろうが、このリアサイトがあるのとないのとでは
この銃イメージがまるで別のモノになってしまう。
狙うと白いラインがリアサイトの一部に見える。





デザイン的に考えると、下方のマガジンとこの上方の
リアサイトの効果で全体がまとまった感じに見える。
むしろ、マガジンとリアサイトによってデザインが完成
されていると言っても過言ではないだろう。
そして、このサイトは写真のようにノッチが切ってある
だけなのだ。カーボン又はカーボン調の部分は全くも
ってデザイン以外に意味は無い。
が、このサイトに故障と言う言葉は無縁なのだ。
また、狙ってみると非常に狙いやすい事に気付くのだ。


 フロントサイトはレッドランプのファイバー式で、
 光を受けて明るく見えるヤツが標準で着いている。
 前傾でセットされているが、狙ってみて全くそんな
 事は問題にならない事が解る。
 これはデザイン的な要件なのか、光を効率良く
 取り込む為なのかはワタシゃ解んないが、この銃
 のリアサイトとフロントサイトの組み合わせは、ま
 るでマッチ用のカスタム・ハンドガンを撃った時に
 無意識で狙っていたサイトを思い出させた。
 ただサイトのアジャストは、フロントサイトをどうに
 かイジるしか方法がない気がする。
 工場でテストしてから販売されてると思うが・・。











ダラダラ書くよりも、見た方が早い。
狙うとどんな感じに見えるのか!?
写真がそれなのだ。百聞は一見に・・・と言うヤツだ。
手前にスコープマウントがセットされているにも関わ
らず、しっかりと役目を果たしているF・Rサイト。
写真では、レッドランプが若干上に写っているけど、
実際にはもう少し下に位置する。
白いラインの上に赤いドットをチョコンと載せた感じで
サイティングすると思えば良い。
そしてこの少し背の高いF・Rサイトは、デザインだけ
ではなく構えた時の姿勢にも無理が無いし、頬付けが
甘くなったり、首をかしげたりする必要はない設計だ。



 ライフリングはエンフィールドだ。
 H&KやBenelliなんかだと、ポリゴナルとかに
 なったりしてるの?と思っちゃうかもしんないけど、
 至って普通のライフリングなのだ。
 ちなみに、エンフィールド式とは宇宙戦艦ヤマト
 のようなミゾを掘ってあるライフリングの事で、ポ
 リゴナル式とは、六角レンチを粘土に刺した痕跡
 のようなライフリングを言うのだ。
 大抵のライフルやハンドガンはエンフィールドだ。
 が、バーレットやデザートイーグル、H&Kオート
 はポリゴナルだったりする。











マガジンを外したトコだけど、ブラジャーを取ったら実は
パッドが厚かったインチキ・オッパイって感じなのだ!
さ〜さ〜、早く元通りに着けときなさい・・って感じだ!
ワタシが遭遇したオッパイ詐欺や、色んなオッパイの
話をしているとキリが無いので、マガジンの話に戻る。
このマガジンは、ご覧の通りBOXマガジンでありなが
ら、銃の形の一部を構成していてライフルにしては珍
しいマガジンかもしれない。
ピストルではこのようにフレームデザインの一部を担う
マガジンボトムも最近では多いが、ライフルで導入して
いるのは滅多にない。



 近代設計のARGOは非常に撃ち易いらしい。
 その撃ち易さに一役買っているのが、この独自の
 リコイルパッドなのだ。
 構えてみるとしっかりした剛性感がありつつ、発射
 した時は瞬間的な反動を吸収してくれるのだ。
 撃ち比べた事のある人の話では、同じ308のタマ
 を使った場合、M1Aよりも撃ちやすいと言う。
 この写真のリコイルパッドは、少々キズだらけだ。
 それは、この銃のオーナーのいださんが猟場で
 何度もズッこけた証なのだ!しかし3kgちょっとの
 このライフルは、山を歩くには軽くて良いだろう。
 「教習の時のボルトアクションとは全然違うよ!」
 と、いださんもマイルドなリコイルを賞賛していた。









   2.メカニズム




どんなに最新のデザインやコンセプトを盛り込んだ銃
であっても、作動方式に関しては他の銃と基本的に変
わるトコロがないのが現在の銃メーカーの実情だ。
薬莢と一体となった装弾を使用する限り、現在世の中
の作動システムは行き着いてるのではなかろうか・・。
写真は、ボルトをホールドオープンさせたトコだ。



ARGOはロータリーボルトロッキングを採用して
いるが、取り立てて他のライフルと変わった事で
はない。あえて言うと、ボルトのロッキングラグが
オニギリのように三角形になっている事くらいだ。
しかし、それも別に珍しい事ではないが、強度的
に見ればヘタなアサルトライフルより強いかもし
れない。どんな銃でも、リコイルをガードするトコ
は、点で支えるよりも面で支える方が良いに決ま
ってるのだ!
このライフルは308口径だけど、アッパーレシー
バーと一体になっているバレルと、マガジンを
交換する事で30-06の選択も可能だ。
と言いつつも、日本では06の替え銃身がナカナカ
手に入りにくいらしい。
国内に流通しているかは解んないけど、300Win
の口径もラインナップされている。













ARGOの名前がARGOなのは、ベネリが取得した特許
A.R.G.O.、つまり自動ガス調節(Auto Regulating
Gas Operated)システムをそのまんま名前にしただけ
なのか、それとも天文とか古代ギリシャなんかにありそ
うな名前で語呂が良いからなのかはアタシゃ知らん・・。
ガスオペレートシステムは、写真のように以外と小ブリ
にまとめられている。このARGOシステムはショットガン
でも使われていて、ベネリM4なんかも、実際にこのシ
ステムを採用している。
やはり、撃ち易さのヒミツはここにあったのか!?



 ピストンとオペレーティングロッドを保持するスプ
 リングのテンションはきつく、高圧のガスでも
 上手に逃がしてくれそうな頼もしさを感じられる。
 しかし、オペレーティングロッドの作動ストローク
 は短いのだ。
 良く出来てるが、ありがちなシステムなのだ。










ピストン&オペレーティングロッドが下がった図。
見ての通り、少し後ろに下がるだけ。
と言っても、これはありがちな機構だし、ここも多くの
ガス・オペレートのオートローダーと変わりはない。
ガスが吹き出すのでバレルも汚れているが、この部分
はフォアエンドに隠れてしまうので組み立てた状態で
汚れが気になったりする事はない。
タマを発射すると、発射ガスの一部がチェンバーに近
いガスポートから流れて、ピストンと一体のオペレーテ
ィングロッドを押す。
そう、ARGOシステムは大抵のガスオペレートライフル
に比べると、ガスポートがチェンバーに近いのだ。
チェンバーに近い事によって作動に必要な高圧と、より
暖かいままの発射ガスを得る事が出来る。
・・・って、ベネリのホームページに書いてあった。
それより、ワタシが写真を撮りに行かなけりゃ、この
テッポのソージしなかったべ〜!?いださん!






フレームから突き出たボッチをオペレーティングロッド
の一部が押すところの図。
このボッチは直接的にボルトの前後運動の為ではなく、
ロッキングの解除をさせる為のものだ。
これによって、ロータリーボルトのヘッドが回転する事
でロックが解かれて機関部が開放される事になる。
そして、タマが発射された後はボルトが後方へ下がり、
ケースをエジェクトして次弾を装填すると言う、非常に
普通のシステムだ。
タマを発射した後の反作用と、あるとすればチェンバー
内とバレルの発射ガスの残圧で薬莢は排出されるワケ
だけど、シューターがリコイルを感じる時は、それら全
ての工程が終了している後か、ほぼ同時だ。
やっぱし、ライフルでもショットガンでもハンドガンでも、
オートのGUNはリコイルが軽いワケだ!



これはフォアエンド先端にあるネジなんだけど、
どうも作りが良くない。
位置的に強く締め難いし、ショットガンのキャップ
のように大きくないので力もかけ難い。
このARGOのオーナー、いださんの不満点はこの
フォアエンドを留めるネジが射撃をしていると緩ん
でくる事なのだ。例え強く締め付けてもだ。
しかし、このフォアエンドのネジ、つまりキャップの
先端のスワイベルは内部ピストン部のバレルロッ
キングキャップを締めるのに使えるようになって
いたりするのだ。上の方の写真で、マズル側の
スプリングの端のパーツには穴が開いているの
が解るけど、それがその為の穴ポコなのだ。
だったら、これにも穴ポコ開ければいいのにねぇ!











Benelli社では、"ローダー"と呼ぶマガジン。
国によっていくつかのバージョンがあるが、日本では
着脱式の装弾数4発マガジンが主流となっている。
マガジンボトムはそのままで、金属製の弾倉部だけ
を脱着するタイプもあるらしいが、やっぱし商売を考え
れば着脱式マガジンの方が儲かるのだ。
それ以前に、マガジンごと交換出来る方が使う側も
一番手っ取り早いって話だ。





まるで空力を考えて作ったかのような、マガジンボトム
と言うか、マガジンカバー。
実用上、これの良いトコは構えた時にこのマガジン部
までも先台の一部としてグリップできるし、フォアエンド
を指示する方の手首にマガジンが当たって射撃のジャマ
になる事はないのだ。
それより、このマガジン無しではARGOのフォルムが
ARGOではなくなってしまうので、重要な体の一部だ。


マガジンはマガジンリリースボタンを押す事で
簡単に取り外せる。
トリガーガードの前に見える赤い部分は、セフ
ティーボタンで、ボタンを左右に押す事によって
ONとOFFを切り替える。
この手のセフティーは、ハンティング用としては
一番馴染み深いものではなかろうか。
トリガーガード前面が異様に大きいのは、ここに
セフティー、マガジンリリースボタン、ボルトリリ
ースレバー(写真では反対側)が詰め込まれて
いるのだ。デザイン的なものもあるんだろうが・・。








これはトリガーアッセンブリーの右側を眺めたものだ。
ド真ん中に見えるレバーがボルトリリースレバーなのだ。
全弾を撃ち尽くすと、ボルトキャッチが働いてボルトが
ホールドオープン状態になる。
射撃中であれば、そのままエジェクションポートに一発
放り込んだら、レバーを下げてボルトを閉じる事ですぐ
に射撃体勢に入れる。
スペアマガジンがあったなら、その次にマガジン交換を
すればタマは満タンになる。
マガジンリリースの操作も、慣れればトリガーフィンガー
で出来てしまうので、マガジン交換に時間は要らない。
どんな銃でも使うからには慣れなきゃダメって事なのだ。




   3. 実射





このARGOはやっぱり斬新なデザインが手伝うのか
普通のハンティングライフルのクセして、レンジでも
結構気になる存在でいるトコはBAR等とは違う。
レンジでレスト保持していたり銃架に置いてある光景
は、まるで田舎の食堂にスーツのまま偶然食事立ち
寄ったビジネスマンのようにも思える。
それでもこの銃に使用する308装弾は、他のライフル
で発射するのと何ら変わりはない。
マガジンにタマを込めて、ボルトを引いてトリガーを
絞れば、多くのライフルで射撃するのと同じなのだ。
ただ、撃ち易く作られているARGO恩恵はシューター
のみぞ知る事であろう。



 操作についても、特別な事なんて一つもない。
 銃器の取り扱いを理解している者なら、何の問題
 もなく直ちに射撃が出来る事だろう・・。
 チャージングレバー、つまりボルトレバーを引く
 事でチェンバーにタマを送り、発射体制に入る。
 あとは普通のオートマチックライフルと同じだ。
 最先端のフォルムであっても、銃には慣例的な
 操作方法が求められるのが事実だし、安全を
 考えれば紛らわしい操作があってはならない。











気になるARGOの作動はと言うと、気持良い回転で
シューターを不安にさせる事はない。
しかし、約300発をクリーニング無しで撃ったところ、
ジャムが1回あったのはこの銃に関して言える事だ。
300分の1と言うのは、多いか少ないか人によるだろう
が、排莢不良が一度あったのは事実なのだ。
それは、構え方のせいか、弾薬のせいか、全くの偶然
か、クリーニングをしないまま撃ったせいか、アタシゃ
原因なんて解らんし、オーナーでシューターのいださん
にも解んないらしい。
言える事は、エジェクトされたハズのケースが噛んだ
ってのは事実なのだ。が、その後ジャムは無い。



 アタシゃ、自分のライフルだったら色んなタマを
 試したり、弱装・強装弾を撃ち比べてみたりも
 出来るが、なんたって自分じゃ撃てないし、それ
 以前にいださんのライフルをいださんに撃って
 もらうワケだからワガママなオーダーも出せない。
 それでも、すぐ人の力になろうとする彼の感想で
 は、撃ち易く命中精度も問題無いとの事だった。
 100m程度なら狙ったトコには当たるワケだし、
 ハンティングライフルとしては、軽さ、使い易さ、
 信頼性と良い印象だけが残るライフルなのだ。
 日本ではBARを使う人が多いが、このARGOは
 今後日本のハンターにどんな存在のライフルと
 して位置していくのだろうか。
 BenelliのA.R.G.O.システムと共にこのARGO
 の行方も気になるトコロだ。





   4. 感想




ワタシ、Joe-Shoeの感想・・・

まずカッコを見て、取り付きやすいか取り付きにくいかは意見の分かれるデザインだろう。
が、ワタシが射撃したM1A、M700、G3、AR10等の308口径で同じファクトリーアモを
使ってみても、それぞれ撃った感じが違う。
・・誤解の無いように言っとくけど、撃ったと言ってもモチロン海外での事だからね。
銃のデザイン、つまり各部の配置や、作動システムの違いで同じタマでも感想は違う。
このARGOは、平たく言ってしまえば元来のガスオートライフルを近代的なフォルムに
アレンジしたに過ぎない。
しかし近代に行われるアレンジは、大きく銃の味付けまでをも変える事が多い。
古いモノを知っていて、かつ、新しいモノを受け入れる人であればARGOは新しいライフル
はこ〜ゆ〜モンだと言う感触を味あわせてくれる事に間違いないだろう。
ハンターのライフルが、ブローニングに変わってBenelliになる日も案外スグにやって来る
かもしんない。


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