歯科技工業は第5種事業(サービス業)に当たるとされた事例について
(名古屋高裁平成18年2月9日判決)
《本件判決についての解説》
1. 事件の概要
(1) 本件は、簡易課税制度を選択していた納税者(歯科技工士)が、自己の営む歯科技工業が第3種事業(製造業)に該当し、みなし仕入率が70%であるとして、消費税等の申告をしたところ、税務署長から歯科技工業は第5種事業(サービス業)に該当し、みなし仕入率は50%であるとして更正処分を受け、これを争った訴訟事件である。
(2) 第一審(名古屋地裁平成17年6月29日判決)は、歯科技工業は「製造業」に当たると解するのが相当であるとして、納税者の主張を認めた。
(3) これに対し、Y税務署長が控訴を申し立てたのが、本件である。

2. 本件判決の要旨
(1) 製造業及びサービス業という概念は、国語辞典等の用例をみても、その意味内容ないし用語例として必ずしも一義的に解釈することが可能なほど明確な概念とまではいえないというべきである。そうすると、本件において、歯科技工所の事業が、消費税法施行令57条5項にいう「製造業」又は「サービス業」のいずれに該当するかを判断するにあたっては、消費税法、特に消費税簡易課税制度の目的及び立法経緯、税負担の公平性、相当性等についても検討する必要がある。
(2) TKC経営指標によれば、1企業当たり平均の課税仕入れ〔最大見込額、純売上高?(役員報酬+人件費+労務費+営業利益)〕及び構成比(課税仕入れ額の純売上高に占める割合)は、製造業が70.7%、歯科技工所が42%であることが認められ、消費税法施行令57条の定めでは、みなし仕入率は、「製造業」が第3種事業として100分の70、「サービス業」が第5種事業として100分の50とほぼ符合するものである。したがって、歯科技工所を営む事業者が、簡易課税制度の適用を利用する場合の税負担の公平性、相当性等の面からみて、「サービス業」に分類することに不合理性は認められない。
(3) [1]消費税簡易課税制度の目的及び立法経緯、[2]日本標準産業分類では、歯科技工業は、大分類サービス業、中分類医療業に属していること、[3]歯科技工業は、歯科医師の指示書に従って、歯科補てつ物を作成し、歯科医師に納品することを業務内容としており、歯科医療行為の一端を担う事業である性質を有すること、また、[4]1企業当たり平均の課税仕入れ(最大見込額)及び構成比に照らしても、みなし仕入率を100分の50とすることには合理性があること及び[5]税負担の公平性、相当性等をも考慮すると、歯科技工業は、第5種事業「サービス業」に該当するものと判断するのが相当である。
   =原判決取消し・請求棄却=
《本件判決に対するコメント》
(1) 簡易課税制度における事業種区分
  消費税法は、小規模事業者について簡易課税制度を認めており、事業を5種類に分類した上、それぞれみなし仕入率を規定している(消費税法施行令57条1項、5項)。
   第1種事業  卸売業                  90%
   第2種事業  小売業                  80%
   第3種事業  製造業                  70%
   第4種事業  下請加工業・飲食店業・金融業等  60%
   第5種事業  サービス業                50%

(2) 歯科技工業の業態
  歯科技工士は、国家資格であるが、その事業の内容は、歯科医師の指示書に従って、歯科補てつ物を作成し、歯科医師に納品することであり、歯科医療行為の一端を担う事業である性質を有する。
  総務省統計局の日本標準産業分類では、歯科技工業は、従来、大分類「サービス業」、中分類「医療業」に分類されていたが、平成14年3月の改訂により、介護・福祉関係の事業の発展を考慮して、大分類「医療・福祉」、中分類「医療業」に分類されることとなった。
  このような経緯からすれば、歯科技工業は、医療サービスの提供を目的とする事業と考えられる。
  本件判決は、簡易課税制度の目的及び立法経緯、日本標準産業分類における事業分類、歯科技工業の業態、みなし仕入率の相当性、税負担の公平性を総合して、歯科技工業は、第5種事業「サービス業」に該当すると判断したものであって、その判断方法は説得的である。
(3) 立法事実の立証方法
  簡易課税制度における事業種分類の問題は、国語辞典でいうような言葉の意味内容にあるのではなく、みなし仕入率を50%とすることが事業の実態に即するものであるか否かの点にある。
  歯科技工業を第5種事業に分類し、みなし仕入率を50%とする立法を基礎づける事実(憲法訴訟の理論では、これを立法事実という。)の合理性を立証する資料として、TKC経営指標が用いられたことは、TKC経営指標が健全な企業の平均的な実態を示す資料として信頼性、合理性を具備していることを裁判所が認めたということであって、画期的な意義を有するといえる。
《出典:TKC全国会ホームページより》
更新:平成18年4月1日

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