「死物学の観察ノート」[川口
敏 PHP研究所]
学ぶこともたくさんあったが、それより何より、読んでいて、思わず喝さいを送ってしまった。フィールドワーカー(それも、教育学部の理科出身)の思いがストレートに伝わってきたからかな。
「森林インストラクター」[西口
親雄 八坂書房]
杜の「安全保障システム」という概念がおもしろかった。ただ、題名と内容がそぐわないような・・・・ なお、ここにちょっと載っていたのだが、「クリは風媒花から虫媒花に移行中」とある。このへんのことを少し調べてみたい。
「香りの植物」[吉田
よし子 山と渓谷社]
シロツメクサの花には香りがあるなど、読んでいて、へえっと思うことが多い本だった。花の香りについていろいろ試してみようと思う、いいきっかけになる本だつた。
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 植物編」[群馬県]
ここ数年、県のレッドデータブック作成検討委員会が取り組んでいた群馬県版のレッドデータブックの普及版。写真や種の解説入りなのでわかりやすい。ただ、もう少し写真がよければなぁ。それにしても、改めて現状の深刻さにため息が出る。
「アリから
みると」[栗林 慧 桑原 隆一 福音館書店]
息子のために定期的に買っている「かがくのとも」の7月号。生態写真で有名な栗林さんの、そのまた独断場である昆虫の超接写の本だ。ちょっと見ると、その深い被写界深度とパースペクティブのために、まるで精巧なCGるかのような印象を持つが、全く本物の写真。それも大迫力の。そして、そこに写し出された、昆虫のごくごく微小な部分のつくりの精妙さには感嘆させられる。
「パラサイト・レックス」[カール・ジンマー 光文社]
寄生虫の案内書としては、図面などがなくてわかりにくかったが、後半、進化と寄生虫との関係になると、がぜんおもしろくなった。進化における寄生虫の意味(淘汰圧ならぬ寄生圧?)、寄生率と種の系統の関係、雌雄の分化、雄が派手になる理由などを寄生という側面から見直すということは、まったく新しい視界が開けたような感じだった。
「ニックとグリマング」[フィリップ・K・ディック ちくま書房]
ディック唯一のジュブナイルということで、長らく本棚のすみに突っ込んでおいたのを、病気で寝込んだついでに読んでみた。「銀河のつぼ直し」のグリマングをはじめとして、おなじみの様々なキャラクターが登場したが、ジュブナイルとしても、またディック一流の「めまいがする」小説としても、今一つだった。まぁ、この二つを両立させるのは不可能か・・・・
「トランスパーソナル・エコロジー」[ワーウィック・フォックス 平凡社]
最初、ディープエコロジーの根本には「自己実現」があることに違和感を感じていたが、「トランスパーソナル」と結びつくことで納得ができた。道徳的・倫理的規範すらではなく、「自己」を広げることによって、初めて真にエコロジカルな行動を取ることができるという考えは、新鮮だった。なお、ケン・ウィルバーへの批判の視点は、今まで考えもしないものだった。
「生物は重力が進化させた」[西原克成 講談社]
今までも、進化のメカニズムについて異端的な説を唱えている本は何冊か読んだことはあるが、これにはちょっとびっくりした。その内容もさることながら、講談社ブルーバックスの中の一冊として出たことに二度ビックリした。それも、実験による実証までついている。この本についての識者の(本音の)コメントを聞いてみたいものだ。
「3歳からの自然体感ゲーム」[J・ホースフォール 柏書房]
J・コーネル氏の「ネイチャゲーム」の姉妹版とも言える本。3歳から・・・ということで買ったのだが、純粋に自然を体験させるのではなく、その体験をもとに話し合わせる活動が重視されている。その点では3歳の子供には難しいものが多く、原題の「Play
Lightly on the Earth」の方が合っていると思う。でも、 何かの機会にやってみたいものが、「くっつき虫あつまれ」や「おいでおいで」などいくつもあった。
「妖精図鑑 〜森と大地の精〜
」[ピエール・デュボア 文渓堂]
学生の頃からしばらくの間の乱読時代、ケルトなどの神話に興味を持っていた時代があった。そのころのことを話で知っていた妻が買ってくれた本。感謝。ただ残念なことに
、著者がフランス人であるためか、いわゆるケルト的な「匂い」が少ないのが残念。
「科学とオカルト 際限なき「コントロール願望」のゆくえ」[池田
清彦 PHP新書]
題名から誤解の無いように言っておくが、「際物」ではない。近代になって「科学」がいかにして「オカルト」から発生し、さらに現代になってなにゆえ「現代版オカルト」が生まれたかについて述べた本だ。特に、非「再現性」ゆえに「かけがえのない私」を探すのは「科学」の範疇ではないことを示し、その「かけがえのない私」を探すために、科学から「再現性」という「美点」を取り去った「現代版オカルト」ができちというあたりは、説得力がある。
「匂いの記憶」[ライアル・ワトソン 光文社]
ヤコブソン器官といえば、ヘビの嗅覚器官・・・・というイメージだったが、人間にもそれが存在し、さらに識閾下において大きな役割をしているというのは、新鮮な驚きだった。意外な事実をたんねんに積み重ねていくのはライアル・ワトソンらしいが、最後に出てくる仮説は、今回はやや物足りなかった感じがする。周囲の生物の死や感情に植物が反応する「バクスター効果」は、この匂いによる伝達が関係しているのかも?
「世界不思議百科 総集編」[コリン・ウィルソン+ダモン・ウィルソン 青土社]
コリン・ウィルスンとは、「アウトサイダー」以来20年のつきあいとなる。「夢見る力」や「スターシーカーズ」で感銘し、「アインシュタインの城」でうなったものだ。彼の中心となる主張、意識の進化による肯定的な実存主義(?)には賛同するが、さまざまな事象、ちょっと信じられないことまで肯定時に捉えていってしまう点は、やや行き過ぎかと思う。でもまぁ、彼が死ぬまで著作と彼の考えの変化を追っていこうと思っている。
「野生動物ウォッチング」[田中
富美 福音館書店]
子供向きの大判の絵本と思うなかれ。日本の様々な野生動物の生態が丁寧に描かれている。さらに、足跡やふん、死骸の一覧などものせ、自然観察への立派な資料になる。このシリーズはもっと買っていこう。
「哺乳類観察ブック」[熊谷
さとし 人類文化社]
今までの野外観察についての解説書よりも、いい意味で人間臭い本である点が気に入っている。自分のノウハウがさりげなく書いてあったり、自分の経験していない事は正直にそれを述べていることなど、好感が持てる。次の「コウモリ観察ブック」も買おうと思う。
「比べてわかる花の撮り方」[夏梅
陸夫 同朋社]
ちょっと写真の撮り方を変えたくなったのを機会に、生態的な写真(客観的な写真)と主観的な写真を並べて解説してあるこの本を買ってみた。確かに、主観的と客観的では観点がまったく違う。でも、フィールドワークをしながら写真を撮る場合、こうに主観的な写真を撮る余裕を持てるか、いや、フィールドワーク中にそのような写真を撮ろうとすることが無理ではないのかと、逆に思ってしまった。
「森の魔術師たち 変形菌の華麗な世界」[萩原
博光 伊沢 正名 朝日新聞社]
変形菌という名前とその生態のごく一部は前から知っていた。しかし、「変形体」(美しくてブキミな写真に魅せられた)の状態は巨大な多核の単細胞の状態であることや、遺伝子がNである配偶子はほとんどアメーバと見分けがつかないことなど、この本を読んで改めてヘェ〜 という事が多かった。また、写真の素晴らしいにも息を飲んだ。
「虫こぶ入門」[薄葉
重 八坂書房]
今まで、形成昆虫が己のすみかと食料のために、虫こぶをつくるものと思っていた。けれども、虫こぶでその昆虫の存在を目立たせ、形成昆虫に寄生する昆虫を呼んでいるという、植物を主体とした捉え方が非常に新鮮だった。これで、身近な植物に見られる虫こぶについての解説があったらなぁと思う。
「ダーク・ネイチャー 悪の博物誌」[ライアル・ワトソン 筑摩書房]
これは、「匂いの記憶」とは対照的に、ライアル・ワトソンが自分の主張を全面に押し出したものとなっている。そして、その主張を裏付けるために、目まいがしてくるような量の生物学的や人類学的な事実が並べられている。その中でも、遺伝子を残すために種内において行われている権謀術策や、牧歌的に見えるチンパンジーの社会での「対人関係」における緊張、「争い」を排除することに成功した文化の例などが、非常に興味深かった。
「感動をよぶ自然写真の撮り方」[小林
義明 永岡書店]
構図の撮り方やライティング、PLフィルターの使い方など、参考になることが多かった。でも、それをじっくりと活用して写真を撮るヒマがほしいなぁ。(時間があっても、腕がないか・・・・)
「死者の書」[ジョナサン・キャロル 創元推理文庫]
「死者の書」とは言っても、チベットのでも、エジプトのでも、ティモシー・リアリーのものでもない。これは純粋なファンタジー。前半はとてもほのぼのしているのだけれども、だんだん不気味になっていき、最後は・・・・ 現存の作家の中でも好きな人の処女作を久しぶりに読み返した。やっぱりいい。そういえば、最近の作品は「つん読」のままだった。今度読もう。