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昔、インドの高原の貧しい村に荒川義治先生という方が行かれました。そこは、あまりお米が取れなかったので、みんなお腹を空かしていました。そこで、荒川先生は、お米を作った後、麦を作ったらいいのではないかと思い、「麦の種」を取り寄せました。
荒川先生は、村の人たちに「この麦の種を蒔いて、麦を作りましょう」と言いました。でも、村の人たちは「私たちはみんなお腹が空いています。今すぐその麦を食べましょう」と言いました。荒川先生は「これは麦の種で、今食べてしまったら、麦が作れなくなってしまうから、蒔きましょう」と説得しましたが、でも、村の人はなかなか分かってくれません。「先生、見ての通りです。この村は貧しくて、みんなお腹を空かしているのです。子供達もお腹がペコペコで泣いています。ですから、今すぐ食べましょう」。
「蒔きましょう」「食べましょう」「蒔きましょう」「食べましょう」という会話が長く続きました。目の前にはお腹を空かした子供たちが沢山います。実際に「お腹がすいたヨー」と泣いている子もいます。荒川先生も泣きたい思いでいっぱいでした。涙も出てきました。でも、荒川先生は、「でも、やはりこれは種だから蒔きましょう」と言って、麦の種を蒔きました。目に涙をため、神様に「どうかこの麦の種を増やして下さい」とお祈りしながら麦の種を蒔きました。そして半年が過ぎました。麦はどうなったでしょうか。そうです。たくさんの麦が取れたのです。60倍にもなりました。
村の人たちはみんなビックリしました。そして、荒川先生に「その麦を私たちにください」と言いました。でも、今度は「それを食べましょう」とは言いませんでした。この麦の種をしまっておいて、今度はみんなで麦の種を蒔くと言い出したのです。荒川先生は、喜んで麦の種を村の人たちに分けてやりました。そして、お米を作った後、今度はみんなでその麦の種を蒔きました。半年後、麦はまたいっぱい取れました。こうして、この村の人たちは、1年にお米と麦を収穫することが出来るようになり、それからは「お腹がすいたヨー」と泣く子はいなくなったといいます。
あの時泣きながら蒔いた麦の種。そして、その種が豊かに実り、沢山の麦が取れるようになって、その村は豊かになりました。神様は、信じて種を蒔く時、それを豊かに守り育ててくださいます。そして自然の恵みをいっぱい私たちに与えて下さるのです。
「涙と共に種を蒔く人は、喜びの歌と共に刈り入れる。」(詩編126編5節)。
子育ても、同じようなことが言えるのではないでしょうか。その時はしんどくて涙が出るような時もあるかと思います。赤ちゃんが夜泣きをして眠れない。いくら言っても分かってもらえない。「もうお手上げだ」と思えるようなときもあるかも知れません。でも、一生懸命頑張って努力するならば、神様はきっと豊かな恵みをもって報いて下さいます。喜びの歌と共に刈り入れる、そのときを楽しみに頑張りたいものです。
栄光幼稚園長 小鮒 實
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栄光幼稚園報「ひかりのこ」(No.355、2010.11月号)より
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