栄光幼稚園報「ひかりのこ」(No.344、2009.11月号)より 本文へジャンプ

自己チューからの解放

 金子みすずの「大漁」という詩があります。

  朝焼け小焼けだ大漁だ
  大羽(オオバ)鰮(いわし)の大漁だ
  浜は祭りのようだけど
  海の中では何万の
  いわしの弔いするだろう

 鰯(鰮)が沢山捕れた。大漁だと喜ぶ私たち。しかし、海の中では、犠牲になった沢山の鰯(鰮)の弔いをするだろう。

 普段、私たちは、このようなことを考えないで生活しています。それは私たち人間が中心になって物事を考えているからです。(自己中心的・自己チュー)

 二酸化炭素を中心とする「温室効果ガス」のために、地球温暖化が叫ばれています。そこから生じる様々な問題(気候変動、海水の上昇、生態系の変化等々)で、今私たちは悩んでいます。このまま地球温暖化が進めば、将来の地球が危ないからです。

 「自業自得」という言葉がありますが、私たちは、自分で自分の首を絞めるような、そんなことを長年して来ました。それは全て私たち人間が中心になって物事を考える考え方から出て来ています。(自己チュー)

 金子みすずが教えているように、私たちは自分たち人間のことだけではなく、もっともっと大きな視点、ほかの視点からも物事を考えることが必要ではないでしょうか。

 誰でも、自分中心に物事を考えてしまいます。特に、子どもは「自己チュー(自己中心的)だ」と言われますが、その通りです。最初は、みんな自己チューなのです。

 でも、自己チューの子どもも、他者(友だち等)との関係の中で、次第に自己チューから解放されて行きます。それが「子どもの成長」です。

 子どもたちは、友だちとの関係の中で、自分だけで生きているのではないことを学びます。自分の主張が必ずしも通らないことを通して、他者の存在に気付くのです。友だちとケンカをし、もまれながら、他者に対する「思いやり」も学びます。

 勿論、手助けも必要です。その手助けを、幼稚園では保育者が行います。保育者は、子どもたちに、自分だけではなく、他者(友だち)もいることを教え、一緒に仲良く遊ぶ(歩む)ように導くのです。

 広い視点、相手を思いやる心。それは「自己チュー」から解放されるときに与えられます。それが「人間の成長」でもあるのです。

 キリスト教は、人間の「自己チュー」を「罪」という言葉で教え、そこから解放されることを「罪からの解放・救い」という言葉で教えています。
 
             栄光幼稚園長 小鮒 實

   栄光幼稚園報「ひかりのこ」(No.344、2009.11月号)より
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