クリスマスのお話より 本文へジャンプ
絵本・クリスマス・キャロル(こども用)
原作:チャールズ・ディケンズ 絵:ゆーち・みえこ
日本日曜学校助成協会発行 1987年、いのちのことば社卸部発売

 ここは、スクルージとマーレイの会社です。
でも、マーレイは、もう死にました。今はスクルージとボブの二人きり。
あれはクリスマスの一日前の雪の日のことでした。

「おお寒い。手がつめたくて、字が書けやしない。」
ボブは、今日も襟巻きをして仕事をしています。
スクルージは、とてもケチで、ストーブの火を強くしてくれないからです。
「うっほん。ボブ、何しとる。早く仕事をせんか。」
おまけに怒ってばかり。スクルージは本当に心の冷たい人でした。

その夜のことです。スクルージの部屋にマーレイの幽霊が現れました。
体は鎖でぐるぐる巻かれ、その顔のおそろしいこと、おそろしいこと。
「スクルージよ。いじのわるいことばかりしていると、死んだら私のようになってしまうぞ。今夜、昔のお前と、今のお前と、これからのお前を見せてやる。ようく見ておけ。」

「ああ、なんてこった。」
スクルージは、ふとんをかぶって ぶるぶる がたがた。
「死んだら、あんな姿になるだって。いやだ。いやだ。」
こわくて、こわくて、目もつぶれません。そのとき、「ボーン。」
時計が一時を打ちました。

すると、突然、目の前に小さいときのスクルージが現れました。
暗い部屋で、ぽつんと一人、本を読んでいます。
「いつも、さびしかったなあ。ひとりぽっちは、もうたくさんだ。」

次に現れたのは、ボブの家でした。
小さなクリスマスツリーと、テーブルには、ごちそうが少し。
ボブがお祈りしています。
「神様、クリスマス おめでとうございます。
 スクルージさんも、楽しい夜が過ごせますように。」
「わしのために祈ってくれたのか、ボブ。怒ってばかりいて、ごめんよ。」

三番目に現れたのは、二人の男の人でした。
「スクルージが死んだぞ。」「いつ?」「きのうさ。いいきみだ。」
「あんな嫌われ者は、早く死んだほうがいいよ。あっはっはっ。」
スクルージは心臓が止まるかと思うくらいドキッとしました。

急にあたりが真っ暗になりました。ビュービュー、ザワザワザワ。
どうやらここはお墓のようです。
「あ、あれは何だ!」
目の前のお墓に、スクルージの名前が書いてあるではありませんか。
「いやだあ! わしはひとりぼっちで死にたくない! 助けてくれ!」

気がつくと、スクルージはベッドの上にいました。窓からはまっ青な空が見えます。ほっぺたをつねってみました。
「いたい! よかった、わしは生きているぞ。」
スクルージは、神様にお祈りしました。
「神様、ごめんなさい。もう悪いことはしません。これからは良い人になります。」

その日は、ちょうどクリスマス。スクルージは飛び起きて、ボブの家に大きな七面鳥のご馳走を届けました。それから教会に行き、クリスマスの礼拝をささげました。
この出来事のあと、スクルージの心と会社のストーブは、とてもあたたかくなりました。

   クリスマスのお話より
 クリスマスのお話