たいそうむかし、赤城の山にはたくさんの鬼がいた。そのなかにとても強い鬼が二匹いて、たがいに自分の力を自慢して
いた。
二匹は赤鬼と青鬼。いままで何度か戦ったがいつも勝負がつかない。そして今年もまた、二匹が勝負をする日がきた。
その年は、いつになく山いもがたくさんとれた。鬼は山いもが大好物。赤鬼は青鬼にないしょで、勝負の前にたらふく
食べた。
たくさん食べたものだからブー、ブーと、ところかまわずおならをする。
いよいよ勝負のすもうがはじまった。二匹の鬼は土俵の上にのぼり、ガシッとばかりにぶつかりあった。ところがそのまま
動かない。
それぞれの鬼はひたすらおにらをがまんしていたのだ。
ブーとすれば気が抜ける。そしたらそのすきに負けてしまう。二匹ともそう考えていた。ここで力を抜くわけにはいかない。
そのとき、行司が大きな声で気合を入れた。その瞬間、がまんにがまんを重ねていたおならが一気に噴出した。
「グォーッ」
そのおならは山を揺るがし、まわりのすべてを吹き飛ばしてしまった。それだけではない。二匹の鬼は、その勢いで空高く
舞い上がり、しばらくしてから落ちてきた。
赤鬼はしりから落ちて、大きい穴をつくった。これが赤城山の大沼になった。
青鬼は頭から落ちて、小さな穴をつくった。これが小沼になった。
じつはこの二匹の勝負はいまでも続いていて、大きなおならを吹き鳴らしているそうです。
”それが赤城のからっ風”だと言われています。 これホントです。
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