2003年夏 - 丹沢・源次郎沢・モミソ沢・小草平ノ沢[1/2]

--------「丹沢の沢に行きました。」

4年 三井 達也 Mitsui Tatsuya

1日目

2003年6月7日
大倉バス停…モミソ沢出合…源次郎沢…モミソ沢出合(泊)
メンバー:C.L.中山(4), 三井(4), 荒井(1), 鈴木(1), 永谷(4)
源次郎沢の位置
コースタイム
大倉バス停8:50
9:00
竜神の泉9:24
9:30
モミソ沢出合10:15
10:50
源次郎沢出合11:10
11:25
源次郎沢二俣下12:05
12:25
源次郎沢二俣12:45
12:55
ツメの途中14:00
14:05
大倉尾根1128m峰14:20
14:30
モミソ沢出合15:40
22:00就寝
 

登場人物

4年

中山(CL)
「最近MacOSX(*1)でさぁ〜」なんて切りだしで会話を始める、もう根っからマカー(*2)。丹沢は沢パーティに言わせるとホームらしい。最近、藪山と県境のマニアック縦走に凝っている(*3)
三井(SL)
「金が無いから近場」(*4)これがもう自分の座右の銘の様な、そんな荒んだ日々を送っている。一時はマック三井と言われるほど(*5)昼飯時になると駅前のマクドナルドに出没したのだが、最近は近所のスーパーでコロッケと食パンを買ってコロッケバーガー(自作で一つ50円)を食べて飢えをしのいでいる。
永谷(随伴者)
1年生を連れていくようなヌルイ山には普段は来ない、クライマー。昨年バイトを止めてから、YCC(*6)の方で山に行く回数が減った様だ。ずるい事にゲスト参加する事が多い。沢好きなので今回は付いてきた。

(*1)米Apple Computer社の最新のOS。

(*2)マカー---Apple Computer社のコンピュータMacintoshを使う人のこと。Macintoshの略称が「マック」なので、それに「〜する人」を意味する接尾語"-er"を付けて「マカー」と呼ぶ和製英語。OSにMicrosoft社のWindowsを使う人がMacユーザーをバカにするときに使うことが多い。

(*3)日光白根山〜皇海山足尾・袈裟丸山日光・根名草山の各項を参照。

(*4)このときも初めは日帰りで計画していたが、三井の「金がもったいないから一度に複数の沢に登ろう」という提案から源次郎沢・モミソ沢・小草平ノ沢の3つを行くことになった。

(*5)いっときは「三井の体の80%はハンバーガーで構成されている」と言われたものである。

(*6)YCC---Young Climbers Clubの略。社会人山岳団体の一つ。

1年

荒井(見習)
「実は脱いだら凄いんです」ばりの隠れ肥満だという長身の男。インテリっぽい。縦走をメインでやっていきたいらしいが荒れ場に弱い。前回の沢(*7)でちょっと沢好きになった。
鈴木(見習)
ホラー映画で一番最初に殺されるイメージのある、中背のぽっちゃり系。特徴、寡黙。今の所弱いけれどもちゃんと付いて来ているので、数をこなして山に入ると成長するだろう。今後に期待(3年前の自分が想起される)。縦走家で、今回が沢デビュー。

(*7)奥多摩・水根沢谷の項参照

はじめに

前回の水根沢、鈴木に発熱ドタキャンという荒業を食らってしまったので、とりあえず早めの時期に沢経験をさせておきたかった我々は、とりあえず近場の丹沢から選んでF.W.(*8)を出す事にした。山を選ぶ時にはもうお決まりの様に用いるシステムがある。この文節を何度書いた事だろう。「生き字引ナカヤマ」である。Windowsだと即ダウンしそうな検索システムでも、Macユーザーの彼を介すると、それはもう一瞬である。Win98機からの買い替えを考えている私としては、UNIXベースであるMacOSX(もしくはLinux)への移行を本気で考えていたりする。それで、今回は源次郎沢とモミソ沢のダブルヘッダーで行く事に決定した。

(*8)F.W.---フリー・ワンデリング Free Wanderingの略。東工大ワンゲルにおいてはトレーニング山行(トレ山)とフリーワンの2つがある。前者は合宿に向けたトレーニングの山、後者は特に合宿などにしばられない「そうだ、京都行こう」のような動機で行く山。もっとも部員数が少なくなって、2つの境はあいまいになってきている。



 さて、丹沢と言えば「月曜朝立ち」というコマンドが可能なので、そのようにする。朝8:00に渋沢到着。そこからバスに乗るのだが、ここのバスはセコイ事にザックにも料金を取る事が有る。ここのバスはそれこそ登山客で持っているような物なのだが、こんな不親切はちょっと悔しい。ただし、偶に運転手さんによってはザック運賃を回収しない場合があり、まさに今回においてはその僥倖が我々一行に降りかかってきた。終着点もお決まりの大倉である。

 でかい橋を渡って一時間を超えるロードが始まる。ワンゲルの連中とはしょっちゅう顔を合わせているので、我々の間では幾つかのお決まりの会話が有り、この時はその内の一つ「土木建築」=「ナカヤマ」の話を振る事にした(内容は覚えていないので注釈をお願いします中山さん(*9))。ロードの途中、数十分歩くと水場が在り、そこで業務用ポリタンクに目一杯汲んでいる人がいた。我々はいつも「南アルプスの天然水」改め天然ミネラルウォーターを行動中に飲んでいるのでこういう物の価値を忘れがちになっているようだ。その後もたらたらとロードが続いた所で、翌日遡行する予定のモミソ谷の出合の近くを通りかかった。ついでなので今担いでいる荷物をある程度デポして、沢道具一式を装備して、それから源次郎沢の出合に向かう。途中、3,4人の女性の方々がトイレを探して途方に暮れていたが、15分程の距離にあるオートキャンプ場に間に合ったのだろうか?部員には男しかいなく、そういう問題が無い事が幸せといえば幸せなんだろう。永谷があそこで泊まりたいなんて駄々をこねるのもお約束の一つだ。

(*9)大倉にある大きな斜張橋について話をした気がする。主塔からのケーブルで橋梁を支えてるとかそんな話。

源次郎沢入渓
源次郎沢入渓
最初の滝
最初の滝

 さて、源次郎沢の出合に着いたのが11:00、「あれ?かなり遅いんじゃないか?」当然の疑問が頭を過ぎり、リーダー会議が始まる。結論は、ここはE.R.(*10)としてすぐ隣に林道がはしっているので、行ける所まで行ってから横に逃げる事にした。やはり前夜発の方が確実の様だ。最初、ちょっと横に逸れて入渓点が始まるので笹が五月蝿いけども、沢自体はごく普通に楽しめる。少し幅の広いゴルジュっぽい箇所が暫らく続き、頻繁に滝が出てくるので退屈しない。5m位のものが多く、どれもザイルを必要としない程度で初心者を連れてくるには調度良い沢といえる。実は毎年恒例で出している、沢入門編の勘七の滝よりもこちらの方が良い気もしてくる。写真がたくさん有れば雰囲気を伝え易いと思うのだが、如何せん私は写真経験の浅いヘボカメラマンなので良い物が撮れなかったのが残念だ。

(*10)E.R.---エスケープ・ルートEscape Route、危急時避難路とでも訳せばいいのか。何かあったときのために想定しておく別ルートのこと。NHKで放送された『E.R 緊急救命室』(Emergency Room)ではない。

滝をこえる
滝をこえる
源次郎沢F4
源次郎沢F4

 そのまま苦も無くぶらぶら進んで、確かF4を巻いてちょっと行ったところ分岐に出くわして、(1時過ぎ位だったかな?)時間も程よく左側を選んでそのまま適当なザレ場から登山道へとエスケープした。適当にエスケープしただけあって、沢の詰め特有の急斜でザレ、落、笹薮の揃い踏みを経験する事になった1年の二人組み。ここではやはり荒井が弱さを見せる。先程までと急にペースが落ちるのが見て分かる。永谷がさっさと先に行って暇そうに休憩を取っていて、中山が先で荒井をカヴァーし、私が後ろでマイペースの鈴木をカヴァーする形だ。急斜面の所々ににょっきりおがる太い幹に背を預けて見守っていると、荒井が息も絶え絶え聞いてくる。

「永谷さんにしても、どうして先輩達はそんなに余裕なんですか?」

あぁ、これは誰しも1年の時に思う事だろう。彼らも来年以降に分かってくるだろう。答えて私はこう言う。

「二人(1年)が遅いからその分休めるんだよ。」

 山は慣れと言うが、確かにその通りで年季と共に強くなっている自覚がある。普段運動をしていなくても、山を始める以前に比べて確かに持久力がついている。永谷から聞いてうろ覚えではあるが、縦走(長時間運動)を繰り返していると脂肪の燃費効率が上がるようだ。バテにくくなるそうな。1年二人には頻繁に山行くなりジョギングなりをして心身ともに鍛えておいて欲しい。休憩をはさめつつも、途中で営林所の人達が使っていると思われる林道に合流し、そのまま登山道(大倉尾根)に到着。丹沢の登山道は相変わらず急に下界に下りたかのようなギャップがある。整備された道に憎っくき階段が登場。膝が壊れる危険性を無視し、大倉尾根(*11)をダッシュで駆け下りる。この時はもう後ろに構わず、永谷と二人で下らない話をしながら50分に及ぶ階段を下っていった。

(*11)大倉尾根、ではない。天神尾根である。大倉尾根は塔ノ岳から派生し、南にのびて大倉集落に至る主稜線。私たちが使ったのは大倉尾根の枝尾根で源次郎沢出合に戻る天神尾根である。

 幕営地(モミソ沢出合)に着いて中山に気象を取って貰う。翌朝は雨が降りそうな勢いだったが、気を取りなおしてお待ちかねのディナータイム。夕食は中山の持ちこみ、というかニュージーランドの余りのシチューの缶詰を頂く事にした(*12)。好奇心からこの申し出を快く受けはしたのだが、実際蓋を開けるとそれはもう吃驚(びっくり)。私が中国人ならこう言ったものだ。「アイヤー、インド人も吃驚アル!!」見た目は真っ当なのにこの味は何なのだろうか。口を切ったままスプーンを噛んでいる感じ、つまり鉄臭さしかしないのだ。塩味も足りなく、これは再調理を見越したものなのか、それともニュージーランドの人がアレなのかの理解に苦しむ。さてここからがお楽しみのメイン、焚き火である。談話をしつつ衣服を乾かす事、これが至福だ。1年の高校生時代の話や破天荒な麻布高校の話など、とりとめの無い会話で夜が過ぎていった。この時、多種多様な話を振った永谷が鈴木の受け答えを聞いて出した結論が「ブラックホールけんいち」だ。「奴は全ての会話を吸収する。」そう言い残していた。(最近は私のボケに返してくれる様になったのでちょっぴり嬉しい進化を遂げた。)。

(*12)ニュージーランドに行ったときについてはニュージーランドの項参照