2003年夏 - 奥多摩・日向沢ノ峰

----------「身近な山、奥多摩〜日向沢の峰」

4年 三井 達也 Mitsui Tatsuya

日帰り

2003年7月6日
川乗橋バス停…百尋ノ滝…日向沢ノ峰…長尾丸山…棒ノ折山…奥茶屋
メンバー:中山(4), 三井(4), 荒井(1), 鈴木(1)
日向沢ノ峰の位置
コースタイム
川乗橋7:15
川乗谷480m7:30
7:40
百尋ノ滝8:58
9:15
1100m10:27
10:43
日向沢ノ峰11:50
12:19
県境尾根1087m峰13:20
13:40
長尾丸山14:30
14:50
棒ノ折山15:40
680m付近15:55
16:40
奥茶屋17:05
17:20
とりがや橋18:10
19:20就寝

はじめに

 果たして4年になった我々は、こんなにちょくちょく山に登っていて卒研ゼミは大丈夫なんだろうか?そんな疑問が頭を掠めつつも、「いや、そんなに勉強ばかりしているのも効率が悪いんじゃないか?たまには息抜きも必要なんじゃないか?」という自己欺瞞の下、五月からほぼ毎週フリーワン(*1)(トレ?)に行っていた。勿論バイトをする時間も無いほど忙しい身としては、なるべく懐に優しい場所に行きたくなるものである。そんな時に便利なのが近場の山、奥多摩である。

(*1)フリーワン---フリー・ワンデリング Free Wanderingの略。東工大ワンゲルにおいてはトレーニング山行(トレ山)とフリーワンの2つがある。前者は合宿に向けたトレーニングの山、後者は特に合宿などにしばられない「そうだ、京都行こう」みたいな動機で行く山。もっとも部員数が少なくなって、2つの境はあいまいになってきている。

 周知のように、奥多摩は関東最高峰の雲取山を始め、奥多摩湖の周辺に豊かな山域を形成している。低山ハイクを始め、カモシカ山行、果ては奥秩父に臨む長期縦走まで、ありとあらゆる形の縦走が楽しめる。稜線からこんこんと溢れる岩清水は登山者の喉を潤すだけでなく、周りの峰々に沿ってその流れを集めて筋を成し、ゴルジュからナメまでの様々な入り組んだ渓谷を形成していて、沢登りをも楽しめる一大テーマパークばりの山域として重宝されているのだ。ビバ奥多摩!

 今回は1年生に多少なりとも縦走経験を積ませようという事で、本来なら八ヶ岳辺りの岩稜帯に臨むのが筋なんだろうけども、ちょこっとだけ楽をして近場の奥多摩の籔山縦走と相成った。基本的に奥多摩の尾根には道が付いていて、まるっきりのド籔漕ぎは期待できない。が、しょうがなかった事情も有る。実際、ド籔を経験させたければ上越の方には最適な山が揃っている訳なのだけれども、連れていく我々の方も…辛い。と言うのは冗談で、この時は1年の荒井が日曜に用事が有るとかで近場の山を探す事になったのだ。


面子は三井、中山、荒井、鈴木のお馴染みの四人組み。春から初夏にかけてはこの面子が部の主だった活動主であり、この山行もご多分に漏れずにこのままだった。まったく、だれかにこの構造体(*2)を引数定義されてしまったのだろうか(なんて事言っているとオタクっぽいな)。さて、金曜夜立ちで奥多摩駅にてステ寝を実行。中山が銀マットを忘れて堅い地面を涙で濡らしているのが印象的だった。しかし、実は1年二人は水ポリを一発ずつしか持ってきていないという事が後々発覚する(当たり前過ぎていて、二発要る事を確認しなかったこちらの落ち度なんだけど)。

(*2)構造体---プログラミング言語の一つ、C言語に出てくる概念。なんか変数をひとくくリに定義するようなもの、だと思った。ポインタでつまっている人間にはよくわかりません。

 さて、相変わらず盛況な奥多摩バスに乗りこんで川苔橋へと出発した。舗装されたアスファルトの道から横に逸れて砂利道を歩く事数十分、分かり易い標識が立ててあり登山道がここから始まる事を主張している。登山道は起伏の無い穏やかな調子が続いており、ちょっとした散歩がてらの森林浴の様だ。深緑の天から日の光がこぼれ落ち、通り道の空気に色を与えながら、地面に当たると今度はそこに鮮やかな明暗を付けている。踏み込む足には柔らかい落ち葉の感触が伝わり、足を置く度に土の懐かしい匂いが鼻に届く。

登山口
登山口(左から鈴木、荒井、三井)
川乗谷の明るい渓相
川乗谷の明るい渓相

 「あぁ、これ、これだよ。山を歩いていて嬉しい事。東京暮らしでは久しく味わうことの出来ないこの空気。甘露、甘露。…というか、これトレーニングじゃないなぁ、行楽だよ。最近は楽、と言うか楽しい山行ばかり選んで行っている気がするな。良いんだろうか、ま、良いだろう。」

なんてことを考えながら歩く事一時間ちょっと、百尋ノ滝のほとりで一本をとる。一尋とはどの位か中山に聞いた所、両手を広げた時の横幅が一尋らしい。百尋とは150〜160m位のかなりのサイズである事を示している。もうウルトラマンもスッポリの大きさだ。となると、千尋の滝なんかはどうなるのだろう?とか考えながら休憩した。

1年生に現在地確認をさせる
1年生に現在地確認をさせる
枝沢を登る
枝沢を登る

 ここら辺から、この先のルートファインディングに備えて地形図の位置確認をしながら進んでいく。1年の二人はまだ経験が浅いだけあって30〜40点くらいの出来。その内上手くなっていく事を祈りながら先に進んでいく。暫らく進むとトップの荒井がそれらしい沢筋を見つけて佇んでいた。この山行は登山道から外れて進む事に主眼を置いているので、川苔山手前の分岐道の更にちょっと手前の沢沿いにルートをとる。昔についていたであろう踏み跡っぽい所に沿って北上し、日向沢ノ峰手前の稜線に出る寸法だ。沢は倒木、流木によって堰き止められていて、歩きにくいながらも川原を歩いていく。鈴木と荒井の二人は歩きずらそうにしているが、私と中山の二人は慣れた物である。過去のトレーニングってちゃんと生きてくるものだ。暫らく行くと沢も枯れてくるので適当な斜面を登っていく。多少手前の支尾根に出てしまい、適当に当たりを付けて歩き出す。

 地形図では途中で止まっている道路が今現在は結構伸びているらしく、踊平トンネルという工事中の場所に辿りついた。この道路は恐らく川俣(*3)とか、なんか北の方にある村落に繋がっていくのだろうが、果たして総工費に見合うだけの利用者がいるのだろうか?いつもこういう工事現場に遭遇する度に疑問が浮かんでくる。国交省大臣はちゃんとこういう細かな所まで監査させているのだろうか?とりあえずだだっぴろいトンネル内で「海女の子供」を歌ってから出発する。

(*3)川俣って、栃木県の川俣温泉のことか?「東京暮らし」しているなら関東の地名も覚えて下さい、三井君。

日向沢ノ峰山頂へ登る
日向沢ノ峰山頂へ登る
日向沢ノ峰山頂付近で寝そべる三井
日向沢ノ峰山頂付近で寝そべる三井

 多少戻って登山道に合流。登山道は防火帯?としての役割を果たしているらしく、その両側がすっぱりと林が伐採されている。気持ちのいいちょっとした丘のような道が続く。非常に歩きやすく正にピクニックという印象がばっちりの場所だ。が、途中で鈴木がバテて中山がダブルザックしていたのがちょっと悲しい。もう少し鈴木を鍛えた方が良い様だ。さて、一時間も歩くと日向沢ノ峰山頂に着いた。ただしそこはピークと言うにはおこがましく、只の小ピークといった感じである。〜山ではなく〜ノ峰なのでしょうが無い。  当たりを見渡すと小さい道標が右手に見え、長尾丸山棒ノ折山へと続く道(尾根)が続いている。ここからは期待外れで、そこには籔漕ぎをする必要のないしっかりとした切り分け道があった。少し急で滑りやすい土の下り坂が続いていて鬱陶しく、只の「歩きにくい道」である。何回かこけた。

日向沢ノ峰からの下り
日向沢ノ峰からの下り。土の斜面で滑る。
長尾丸山山頂
長尾丸山山頂

 下り終わるとそこからは只の林間コースのような道が続いているだけであり、それはロードともとれるツマラナイ道の連続だった。今回は失敗気味の山行と言えよう。更に追い討ちをかけるように、鈴木が熱っぽい事を訴える。もう敗退決定もいい所であり、結局今回楽しめたのは一般登山道の縦走だけだった。

 帰り際に雨に降られて、翌日の沢(真名井沢(*4)遡行を計画していた)をどうするかを中山と相談したが、最近の甘ったれた山行に慣れた私はかなり渋った記憶がある。結局翌日晴れる可能性に賭け、途中まで1年生を駅へと見送ってから4年二人で沢の出合(真名井沢とりがや橋)を目指す。端からビバーク装備で臨んだ山行なので、雨にピチピチと打たれながらツェルトとシュラフカバーに包まって捨てられた子猫の様に夜を明かす事となり、ここら辺にトレ山の匂いが感じ取れる。結局翌日も天気は雨であり、既にF.W.となった山行で雨の沢は馬鹿らしいという結論に落ち着き、早朝5時前には川井駅へと向かう。

(*4)真名井沢---大丹波川支流の沢。初級者向け。この2週間後に行ってみたが、ザイルが必要になることもなく、初めての人には適しているかもしれない。ツメの急勾配がいただけないが。

 こうしてトレ山のような良く分からない山行は、ビタースメルを残して終幕する。果たしてこれで1年生がイッパシの山屋に育ってくれるのだろうか、そんな疑問はこの後に続く記録が解消していく事だろう。

commented by Nakayama